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「昭和」という国家/司馬遼太郎

 

「昭和」という国家 (NHKブックス)

「昭和」という国家 (NHKブックス)

 

 

 本来なら『「明治」という国家』から紹介すべきなのかもしれませんが、ここのところ昭和史の本を立て続けに読んで、この本のことを思い出したので、敢えてこちらを先に紹介します。

 あらゆる時代の歴史小説をモノにされた司馬さんですが、昭和史だけは手掛けておられないのを不思議に思う人もいたかと思うのですが、半藤さんの『昭和史』の中でもちょっと触れられていたのですが、司馬さんにとって昭和史は、言ってみれば「アキレス腱」ともいえるもので、自らの原体験である敗戦が、ある意味トラウマになっているかのようです。

 この本でも、昭和元年から敗戦した20年までを、日本史の中でも異質な時代ということで「魔法の森」という言い方をされていますが、それを導いたのが軍部、特に参謀本部だとおっしゃいます。

 ただ、参謀本部だけがどうのこうのというわけではなくて、日露戦争後の講和条件への不平を起因とする日比谷騒動が、昭和20年の敗戦へと向かう空気の原点を作ったということで、国民全体としての責任は免れ得ないもののようです。

 この本でも、明らかに質量ともにはるかに自軍を凌ぐ仮想敵国の現状を見ないようにしようとする陸海軍の姿が紹介されていますが、そういう姿を見て、生き残って行かなくてはいけない、地方豪族や中小企業の親父さんは、決してそんな愚かなことはしないはずだと嘆かれます。

 ただ、昭和史を語るのはそこまでで、そういった「魔法の森」に向かう江戸~大正期を語るだけで、「昭和」を正面から語るのを無意識に避けれらているような感じを受けます。

 それだけ、深いトラウマだということでしょうか…