「学力」の経済学/中室牧子

 

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

 

 藤原和博さんの『本を読む人だけが手にするも』の推薦図書なんですが、長らく図書館で予約していたモノが、ようやく順番が回ってきて手に取ることができました。

 この本の著者である中室さんは、教育経済学という経済学の一分野を専門とされていて、教育にまつわる様々な問題について、数字の裏付けのある処方箋を紹介されています。

 よく言われる、「いい成績を取ってきたら、お小遣いをあげる」という問題について、自主的な取り組みを阻害するという批判がなされますが、これについては、与え方によってはある一定の効果があるということを紹介されています。

 また、少人数学級の効用については、モチロン手厚く教えられることの効果があるんですが、それにかかる費用を考えると、その効果というものは決して十分とは言えないようです。

 アメリカでは、教育経済学の研究の一環として、実験データが蓄積されているようですが、日本ではモラル論から、そういう実験をすること自体に拒否反応があり、この分野の研究が遅れているようです。

 どうしても教育に関する問題としては、道徳論や情緒論的な話に終始してしまいがちですが、あくまでも「費用対効果」というものを念頭に入れた上で考える必要があるんじゃないか、ということで、この本の最後に「教育にエビデンスを」ということで、数字の裏付けのある議論をすることを提唱されています。

 怪しげな教育評論家を、こういった冷静な議論でギャフンと言わせてみたい気になるのは、ワタクシだけでしょうか…