50歳からのゼロ・リセット/本田直之

 

 

 ノマドとかスローライフとか、ずっかり“アチラ側”に行ってしまわれたかと思われた本田さんですが、最近チョボチョボ“コチラ側”に戻ってこられたかのような著作を出版されており、この本はそういった趣旨の1冊になるのかも知れません。

 まあ、この本で言いたいことは「50歳になっても変化を受け入れ続けよ」と言うことのようですが、これまでの著書でおっしゃられてきたことを目いっぱいちりばめて、1冊の本になるようカサ増しをされているように見えます。

 確かに10年先のことも見通すことは難しい変化の激しい世の中で、変化に対応できなければ去るしかないとなると、変化を受け入れざるを得ないというのは分かります。

 で、本田さんは「人生は壮大な実験である」と冒頭でおっしゃっていて、50歳になってもトライアル&エラーが必要だとおっしゃいますが…

 確かに“ノマド”とか“スローライフ”とかって、魅力的な響きではありますし、それなりの努力をすれば手に入るモノなのかも知れませんが、大多数の勤め人にとっては“アチラ側”の出来事であり、“レバレッジ”のような実用的なスキルに魅かれてついた読者はついていけずに離れてしまったでしょうし、論理的な構成を放棄してしまい、これまでの著書でおっしゃられてきたことの繰り返しをちりばめておられて、安易な造りの本に思えてなりません。

 「人生100年時代」に乗っかって、こんな本を思い出したかのように出されたのかも知れませんが、何とも釈然としません。

 まだ“アチラ側”で夢のようなことを語られていた方が良かった気がします。