伝える力/池上彰

 

伝える力 (PHPビジネス新書)

伝える力 (PHPビジネス新書)

 

 

 わかりやすいニュース解説で知られる池上さんが教える、伝え方の極意です。

 伝え方についての細かいテクニックも紹介されているのですが、それよりももっと大切なことがある、ということで、その前提のところに多くの紙面を割かれています。
 
 特に、池上さんが広く知られるきっかけとなった、NHKの「週刊こどもニュース」での経験を踏まえて「伝える」対象となることを、しっかりと知ることの重要性を強調されます。
 
 というのも、まったく前提知識のない相手に説明をしようとしたら、表面的な知識だけではなく、その背景やキモのところまで、ちゃんと抑えられていないと、相手が納得できるような答えを返すことができないからです。

 後は、何かを伝える上で、相手からの信頼を得ていることの重要性を語っておられて、そういう意味でのノウハウもふんだんにあります。

 まあ、そういう風に前提となることの記述も多いですが、実際に伝えるときの実践的なノウハウも豊富なんで、是非とも手に取ってください。

 

新・戦争論/池上彰・佐藤優

 

 

 「ニュースの良心」池上さんと「知の怪人」佐藤さん、お二方の対談による戦争論です。

 冒頭に、安保法制に関する与党、野党、世論それぞれの言わんとするところを紹介されて、いずれもキモのところを外した議論をしていて、結局、法案を作ったはいいわ、何もできない法律を作ってしまいました…ということで、日本人の国際感覚のズレを指摘されています。

 半藤さんと出口さんの対談本で、日本人はプレーンに世界で起こっていることを見るのが苦手だ、という指摘をされているのを、このブログでも紹介しましたが、同様の指摘をされているんだと思います。

 北朝鮮の情勢を紹介しているところで、安倍政権の対応に言及されているのですが、世間で安倍首相の対応が“単細胞”と言われているのに対して、佐藤さんは“半細胞”と痛烈な一発をカマされています。

 というのも、自分の支持率を上げたいがために、拉致被害者をカネで買って、そのカネが核兵器開発に費やされているのを見て見ぬフリをしているということで、世界平和と支持率を引き換えにしているという批判を展開されています。

 それぞれ世界中を“プレーン”に見るというのが、お二方のおっしゃる“インテリジェンス”に近いんだと思われますが、この
本が書かれた2014年当時、世界を“インテリジェンス”と通して見ると、こうなんだということが、各地域について紹介されています。

 重装備を選択しなかった日本が、何を武器に戦っていくか、というと“インテリジェンス”のはずなんですが、それも相当に立ち遅れているということに対する、お二方の苛立ちがありありと感じられた次第でした。

 

まんが パレスチナ問題/山井教雄

 

まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)

まんが パレスチナ問題 (講談社現代新書)

 

 

 AERA時事風刺の1コママンガで知られる山井さんのパレスチナ問題に関する著作です。

 「まんが」とありますが、イラストはふんだんに盛り込まれてはいるんですが、いわゆるストーリーマンガ的なものではなくて、文章に沿ったイラストが各ページに大きめに添えられていると言った感じです。

 そもそもこの本は、山井さんが民族主義の激化という流れに抗うという意図をもって書かれた本だということですが、そういう「民族主義」というものが、大国のエゴの下に、恣意的に「作られてきた」ことを指摘されています。

 確かにテロリズムは卑劣なんですが、その火元を作った、もしくは火元を作る支援をしたがゆえに反撃に遭っているといった側面は否定しがたいところであり、粘り強く絡まった意図を解きほぐす努力をしていかないといけないということなのでしょうか…

 

その科学が成功を決める/リチャード・ワイズマン

 

その科学が成功を決める (文春文庫)

その科学が成功を決める (文春文庫)

 

 

 この本も『年収を上げる読書術』の推薦図書なんですが、この本は“The 自己啓発書”っていうのではなくて、むしろ真逆と言うか、自己啓発書でありがちな内容について、実際に実験をしてみて、その有効性を科学的に検証してみよう、というものです。

 プラス思考がマイナスに作用するとか、婚活マニュアルに従うと失敗の確率が上がるとか、そういうことを実験を通じて、数字で示されると、今までそれを信じて行動していた人の立場は…なんですが、ちゃんと有効性のあることも、中には含まれています
ので…

 

『夜と霧』ビクトール・フランクルの言葉/諸富祥彦

 

『夜と霧』ビクトール・フランクルの言葉 (ワニ文庫)

『夜と霧』ビクトール・フランクルの言葉 (ワニ文庫)

 

 

 精神科医であるビクトール・フランクルによる、ユダヤ人強制収容所での体験を描いた『夜と霧』を読むつもりが、図書館のHPから予約してみると、間違えて、そのエッセンスを抽出した本を手に取ってしまいました。

 「エッセンス」なんで、もちろんフランクルの世界を味わうことはできるのですが、ちょっとこういう「ひっかけ」みたいなタイトル、勘弁して欲しい…

 ということで、実際のレビューは『夜と霧』を読んだ時に、ということで、グチだけで失礼しました…

 

アルケミスト 夢を旅した少年/パウロ・コエーリョ

 

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

 

 

 この本、本田健さんが再三推薦図書として挙げられていたり、『年収を上げる読書術』の大岩氏が推薦されていたり、中学校の読書感想文の課題図書となっていたりで、気になっていたのですが、ようやく手に取ってみました。

 羊飼いの少年が「宝探し」の夢を追いかけるために旅を続けるという物語なのですが、その過程で全財産を失いながらも、機転を利かせて、以前以上の財産を築いたり、愛する人ができて、ずっと一緒にいたいと思ったりと、ある意味夢を「阻害」する要因
が次々と出てくるのですが、最終的には目標を達成するところまで行きます。

 その究極の目標を追い求める意義、ということについてまではこの本では直接的には触れられていないように思えますが、そのことがもたらすことの大きさというものを示唆されるモノになっています。

 

死ぬとき後悔すること/大津秀一

 

死ぬときに後悔すること25 (新潮文庫)

死ぬときに後悔すること25 (新潮文庫)

 

 

 この本も『年収を上げる読書術』の推薦図書です。

 この本の著者は「緩和医療医」と言って、終末期の患者さんの心身の苦痛を緩和するというケアを専門とされているお医者さんで、ご自身の患者さんから聞いたことを中心に、最後を迎えるに当たって、自分の人生で後悔したことをまとめたものです。

 ワタクシ自身、50歳代を目前にして、ぼちぼちこういうことを気にし始めないといけないのかなぁ…とは思いながらも、まだ、なかなかリアリティを感じることができないというのが正直なところなのですが、この本を読んでいると、やっぱりボチボチ考えないといけないのかも…と感じます。

 というのも、家族を大事にしておけば…という企業戦士にありがちなモノは、ワタクシの場合は一旦置いとくとして、意外と、旅行をしておけばとか、おいしいものを食べておけば、というのがあるようで、急に脳梗塞で倒れて逝ってしまったという極端な例ではなくても、段々と体力が衰えていくにつれ、制限が多くなっていき、楽しめる幅が減っていくということで、元気なうちに…というのは、ワタクシもすでに他人事でない領域に差し掛かりつつあります。

 後は、自分にもしものことがあったときののための「意志表示」っていうのも元気なうちにやっておかないと、いざというときには、意識があったとしても、なかなか難しいようです。

 まあ、全く後悔なしで旅立って行けるっていうのは、そうとう難しいんでしょうけど、できるだけそういうタネをつぶしておきたいというのも正直なところです。