「キャリアアップ」のバカヤロー/常見陽平

 

 

 人材コンサルタントの常見さんがご自身の成功・失敗体験も交えて「キャリアアップ」について語ります。

 最近、自己啓発本に関する本を連続して紹介していますが、そういう本にも「キャリアアップ」を目指すような記述が多く取り上げられますが、じゃあ何が「キャリアアップ」なのか?ということを真剣に考えた上で取り組んでいるのか?ということを問います。

 モチロン収入増というのもあるでしょうし、自己実現につながる仕事に就くというのもあるでしょう。

 ただ目の前のことに捉われてしまうと手痛い失敗をすることも多く、常見さんご自身の失敗を踏まえて教訓を抽出されます。

 ただ、何が「成功」なのかと言うのは、その時の感じ方もありますし、長い目で見て判断する部分もあるはずで、「成功」の確率を上げるためには、何が自分に取っての「成功」なのかを自分に問い続けることが大事なのかも知れない…と思わされる本です。

 

ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない/漆原直行

 

ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)

ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない (マイナビ新書)

 

 

 ライターでありながらご自身でもビジネス書の編集者の立場となったこともある方の著書です。

 どっちかと言うと出版社寄りの内容が多い本なんですが、逆にだからこそビジネス書の本質が見えるような気がします。

 というのも、ビジネス書は長らく続く出版不況における数少ない希望の光であるわけですが、出版社にとってこういうキビシい状況にあると、短絡的に“売れる”ビジネス書を出版しようという動きがあり、よくビジネス書を揶揄する本に書かれる「ありがちなパターン」を踏襲したモノが粗製乱造されるということです。

 また読者側も、ホントにスキルアップを図りたいというマジメな読者よりも、“ビジネス書マニア”とも言えるスレッからしが主な読書になっている状況も見られるようで、出版社的には売れればいいか…的な妥協もあり、そういうなれ合いの構図が出てきているようです。

 このブログもそういう“スレッカラシ”にカテゴライズされかねない訳ですが、そういう状況が続けば、すなわち“質の低下”に直結するわけで、そうならないように、批判すべきは批判し、賞賛すべきは称賛するという、是々非々の立場は崩したくないものです。

 

 

難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!/山崎元、大橋弘祐

 

難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!

難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!

 

 

 出版社勤務の投資のド素人が金融のプロであり、投資に関する多くの著書を持つ山崎さんに投資のイロハを学ぶと言ったカタチの本です。

 以前も何冊も山崎さんの投資本を紹介していますが、この方の著書って論点がシンプル過ぎて、結論を言っちゃうと数ページで本が終わってしまう…と言うくらい分かり易い半面、あまりにシンプルなので物足りなさを覚えてしまうという側面があります。

 この本でも、基本的には利回り5%を目指して投資をするのが一般の投資家としての正しいスタンスであり、そのためにはTOPIX連動のインデックスファンドと外国株式のインデックスファンドを同じ割合だけ持つ、ということで以上終了!ということになってしまいます。
 
 ただ、初心者の疑問に丁寧に答えてくれているので、ある程度ナットクした上でこういう結論を提示しているため、割とスッと腑に落ちる感じはします。

 オビの煽り文句に、ありがちな「お金のことはこの一冊で充分!」とありますが、なんとなく同意できる気はします。

 

自分探しが止まらない/速水健朗

 

自分探しが止まらない (ソフトバンク新書)

自分探しが止まらない (ソフトバンク新書)

 

 

 「自分探し」の常見さんが推薦図書として挙げられていたので手に取ってみました。

 「自分探し」というコトバがクローズアップされたのは、2006年ドイツW杯のグループリーグ敗退後に現役引退を表明した元サッカー日本代表中田英寿氏の引退時のHP上での表明だったとされています。

 確かにそれ以前も、OLが30歳手前になって会社を辞めて海外に「自分探し」に出るといったことがあったということですが、ここまで広く取り沙汰されるようになったのは中田氏以後だということです。

 でも、「識者」からは「甘え」などとキビシい論評を受けたり、揶揄するような意見があったりと、あまりプラスの評価を受けることはないようです。

 この本でも、「自分探し」に関する動向を可能な限りフラットな視点で追おうとしているようには見えますが、どこかそういう人たちが真剣に目の前のことに対峙できていないんじゃないか?という疑念を払しょくしていないなかで書かれているようなモヤモヤ感を感じているのはワタクシだけでしょうか…

 

組織の掟/佐藤優

 

組織の掟 (新潮新書)

組織の掟 (新潮新書)

 

 

 佐藤さんに「組織の掟」なんて言われると、ちょっと身構えてしまいませんか?

 結局は外務省と言う「組織」にスケープゴートにされてしまった経験を持つ佐藤さんだからこと語れる「組織の中で泳ぐ」方法です。

 佐藤さんご自身器用に組織の中を泳ぐというイメージからは遠い気がするのですが、その有能さ故に便利使いされることもあったようで、そんな中で如何に無用な地雷を踏むことなく、それでもある程度大胆に仕事を進めていけるようにするか、ということが主要なトピックとなっています。

 佐藤さんがおっしゃると意外に感じる人も少なくないと思いますが「上司には絶対服従」という掟が厳然としてるようで、それは外務省だからというわけではなく、その組織においても「鉄の掟」だということで、もっと早く知りたかった…とワタクシなどは思わなくもないのですが…

 組織の中で生きていくというのは、こんなにもメンドくさいことだったのかと改めて思い返させるとともに、気を付けないと…と背中にちょっと冷たいモノを感じさせる本でもあります。

 

「あいつらは自分たちとは違う」という病/後藤和智

 

 

 サブカル誌なんかを中心に世代論を書かれている方による「若者論」史です。

 昔っから、「今の若いものは…」と言いたがるジジイがいるのはいつの時代も同じことで、長らく、所謂言論界にはジジイしかいなかったので、若者としては言われっぱなしだったわけですが、次第に若者たちも自分たちのメディアを手に入れて行って、状況が変わっていく経緯を語られます。

 ただかなり長い間「風俗の乱れ」みたいなことを言われていたのが、近年は「無気力」みたいなことを指摘されているのが気になるところではあるのですが…

 

「リベラル」がうさんくさいのには理由がある/橘玲

 

「リベラル」がうさんくさいのには理由がある

「リベラル」がうさんくさいのには理由がある

 

 

 橘さんが『週刊プレイボーイ』に執筆されていた連載をまとめられた本で、今まで気が付いていなかったのですが、実はこれまでも『不愉快なことには理由がある (集英社文庫)』『バカが多いのには理由がある (集英社文庫)』をこのブログで紹介していますが、この本も「理由がある」シリーズの1冊だということです。

 橘さんがスゴいなと思うのは、時事ネタに関連したエッセイを1冊にまとめても主張の一貫性のブレがほとんど見られないことで、どこかの政治家や経営者たちに見習って欲しいモノですが…

 かねてからリベラリストやリバリタリアンについて言及することが多かった橘さんですが、自らリベラリストを称しながら、この本では「リベラル」を糾弾するという、妙な空気になっています。

 ただ糾弾する相手は、日本においてリベラリストとされている人であって、どうもリベラリズムはこの国に入って来る段階でミョーなカタチに変形してしまったようです。

 日本のリベラリストが語りたがる慰安婦問題や非正規労働の差別について、リベラリストの論点とその矛盾について語られますが、日本のリベラリストって、割とヘーキで、冷静に見てみるとコドモでも分かるような矛盾したことを言っているみたいで、自分の「正義」に見合ったことだけを語り、そうではないことにはヘーキで知らないふりをするということで、そういうところが「うさんくさい」ということのようです。

 そういう論説を弄することで自分のプライドを保とうとすることが日本の「知識層」には多いようですので、しっかりと眉にツバして対峙しましょう(笑)