ビジネスZEN入門/松山大耕

 

ビジネスZEN入門 (講談社+α新書)

ビジネスZEN入門 (講談社+α新書)

 

 

 若くして妙心寺退蔵院という名刹で副住職をされている方が、最近欧米の名だたるビジネスパーソンの間で広がっている禅の現状と、基本的な考え方を紹介されます。

 最近の欧米における禅ブームはスティーブ・ジョブスが禅に傾倒していたことがキッカケだと言われますが、ずっと前に沢木耕太郎が『深夜特急』の中で禅のことを聞かれたというエピソードもありますし、ワタクシ自身も海外で禅について尋ねられたこともあるので、かなり前から西欧では禅に対する関心は強いようです。

 なぜ禅がここまで関心を集めるかということなんですが、キリスト教にせよイスラム教にせよ、受動的と言うか、悪行に対して“天罰”が下ったり、善行を積むことで“救済”されるとか、あくまでも“他力本願”であるのに対して、禅では悪行に対して自業自得であり、自ら心身を陶冶することで悟りに至るということで、すべて自己責任だということが魅力的に映るようです。

 また特に宗教的なことをしなくても、日々の生活を研ぎ澄ましていくことで悟りに至るという考え方も琴線に触れているようで、そういうストイックさこそが自らを頼むビジネスパーソンにはふさわしいように感じます。

 

 

テレビが政治をダメにした/鈴木寛

 

テレビが政治をダメにした (双葉新書)

テレビが政治をダメにした (双葉新書)

 

 

 先日紹介した池上さんと津田さんの対談本でススメられていたので手に取ってみました。

 著者の鈴木さんは、この本を書かれた当時、民主党参議院議員で、テレビで取り上げられる政治家の立場で、テレビの裏側をアバきます。

 おそらくこの本が出版された2000年代初頭が一番顕著だったと思うのですが、政治家がテレビに出演して政策論争を繰り広げるといった番組がいくつかあったということなのですが、それをそのまま放送しているんであればいいのですが、結構恣意的に発言を取捨選択していたり、ヒドい時には発言の前後関係も入れ替えられていたりして、元の趣旨とは明らかに違う趣旨に受け取られるような内容の放送をしているようなこともあったようです。

 要はインパクト一発みたいな感じで、見てもらってウケればなんでもいいや、ってことで、それが元で失脚につながった例もあるようでシャレにならないですよね。
 
 それだけじゃなくて、民主主義の本義に悖るとも言えるワケで、まさに言語道断の所業をメディアは行っていたようなのです。

 まあ最近は、時の権力にベッタリで全く信用ならないメディアばかりですしね…

 

人生が変わる最高の教科書「論語」/小宮一慶

 

人生が変わる最高の教科書 論語

人生が変わる最高の教科書 論語

 

 

 ものすごく久しぶりに小宮さんの本を紹介します。

 ずっと以前に明治の元勲で日本経済の基盤を作ったと言われる渋沢栄一の『論語と算盤』で経済と倫理の両立について取り上げられていることを紹介しましたが、意外と『論語』って道徳倫理のことだけではなく、自己啓発的な側面もあるんだということをこの本で紹介されています。

 言ってみれば小宮さんが自己啓発本でこれまで書かれてきたことを『論語』の内容をトリガーにして、更には著名なビジネス書の記述などともリンクさせて語られるという感じです。

 だから『論語』って身構えないで、フツーに小宮さんの自己啓発本を通して『論語』を知ると言った感じでいいんじゃないかと思います。

 そんな中で再三、ちょっと成功したからといって自足するのではなく、謙虚にさらなる高みを目指すとか、さらに自分の世界を深耕するとか、そういう姿勢で臨むことをススメられています。

 そういう自分を高めるといった姿勢が遥か2500年も前からあったんだなぁと思うと感慨深いですね。

 

 

韓国経済大崩壊の内幕/辺真一、勝又壽良、松崎隆司

 

韓国経済 大崩壊の全内幕

韓国経済 大崩壊の全内幕

 

 

 嫌韓本にはかなりたっぷりと眉にツバを塗って読むようにしているのですが、この本は2017年3月に出版されて、朴前大統領がスキャンダルで失職する前なんですが、職務停止になっていた時期で、国家機能が停止してかなり経済状態が悪いとは聞いていたのですが、ここまでか…と背筋が寒くなるほどのヒドさです。

 別冊宝島って、結構嫌韓本を手掛けているので、悪い要素をかき集めて作ったんじゃないか、とも思うのですが、『コリア・レポート』の辺さんも執筆陣に加わっているしなぁ…

 とにかく国家機関は機能停止に陥っているわ、これまで韓国経済の支えてきた財閥がスキャンダルや業績不振で総崩れの状態だわということで、そのしわ寄せがダイレクトに国民に来ているようで、若年層の失業率が10%超ということで、英語がペラペラのエリート大学生が卒業しても職が無くてパン屋でのバイトを強いられるということが紹介されています。

 まあ、悪意を持って悪材料をかき集めたら、今の日本でもこれ位のことは書ける気がするのですが、30%位真に受けるような気で読んではいるのですが、元々ウォン安依存で成り立っていた輸出が、ウォン高で停滞し、技術やオリジナリティの欠如で、今、経済の停滞でウォン安に戻っても売れるモノがないという状態にあるようで、これはかなり抜本的な構造改革をしないと、そこが見えてこないのかな…という気すらします。

 

「日本」が世界で畏れられる理由/マイケル・ユー

 

韓国人ジャーナリストがここまで書いた 「日本」が世界で畏れられる理由(わけ)

韓国人ジャーナリストがここまで書いた 「日本」が世界で畏れられる理由(わけ)

 

 

 元々は韓国でジャーナリストとして活躍されていて、その後松下政経塾を経てアメリカを基盤にコンサルタントとして活躍されている方による日本論のようなモノです。

 元々韓国人に向けて韓国語で書かれた日本人論で、日本人に見習うべきところや、日本人の思考壁を踏まえて交流する上で念頭に置いておいた方がいいことについて紹介されています。

 日本での経験を踏まえて、かなり深いところまで日本人の思考のベースや戦略などを踏まえて、韓国人として対処すべきところや、ある意味諦めないと仕方がないと諭すようなところも紹介されます。

 韓国人と日本人との軋轢なんですが、韓国人の“恨(ハン)”をともかくとして、日本人側として個人の責任を明確にしないようにする体制が、結局“犯人”捜しを徒労にしてしまって、それがなお韓国人をイラだたせてしまうという分析は慧眼だな、と思います。

 何とか関係を良くしようという糸口を見つけようと言う意図もうかがえなくもないのですが、結局は噛み合わないというか、これだけ日本を理解してくれようとしてくれる人を以ってもなお、ムズカシイんだなぁ、とちょっと絶望的な感じもしました。

 

マウンティング女子の世界/瀧波ユカリ、犬山紙子

 

 

 『臨死!江古田ちゃん』で知られる漫画家の瀧波さんとエッセイストでコメンテーターとしても活躍されている犬山さんの女子のマウンティングをテーマにした対談をまとめた本です。

 以前タワーマンションを舞台にしたママ友同士のマウンティングをテーマにしたドラマがありましたが、マウンティングって比較的関係性の希薄なママ友だけではなく、表面上親友を装いながら血みどろのマウンティングが繰り広げられているということをこの本で知って心底驚きました。

 確かに周囲の人よりも優位に立ちたいというのは本能に根差すところがあるんだと思うのですが、オンナの人たちって随分メンドクサイ付き合いをされているんですねぇ…

 まぁ、オトコであるワタクシ自身にもこういうことって身に覚えが無くはないのですが、最早枯れ果ててしまいそうなワタクシとしては、スゴいなぁ…と眺めるしかなさそうです。

 メチャメチャ面白いですが、背筋が凍る想いがするコワい本でもあります。

 

「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由/ゆうきゆう、汐街コナ

 

「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)

「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)

 

 

 昨今“ブラック企業”でハードな勤務を強いられた挙句、自殺に追い込まれるケースが多く報道されています。

 そういう時に、タイトルにあるような“素朴な”疑問を抱く人は少なくないと思うのですが、この本の監修者である精神科医のゆうきさんによると、そういう段階になると、当の本人には合理的な判断は下せなくなっていて、自死を選ぶしかない状況に追い込まれてしまっているということです。

 だからこそ、そうならないように比較的冷静な判断が下せるうちに“ギブアップ”をして欲しいと訴えられます。

 「両足の骨を折っているときに全力疾走しますか?」と極端に見える例を挙げられているのですが、追い詰められた状況で更にガンバろうとするということは、それに近いことをしているということで、ちゃんと“ギブアップ”すべき分界点を見極めることが、生死を分けることにもなるということです。

 そういう分界点として、泣くような状況ではないのに涙がでてきたりとか、ガンバっても解決の方向性が見出せないとか、そういう例を挙げられています。

 ということで、フツーの状況の時に“分界点”を決めておくことが重要なようで、決して精神的な疾患を甘く見ないことが肝要なようです。