夜を乗り越える/又吉直樹

 

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

夜を乗り越える(小学館よしもと新書)

 

 

 お笑いコンビ・ピースの片割れでありながら、芥川賞作家となったことで話題になった又吉さんによる「読書論」です。

 以前から様々な読書本でで純文学を読むことをススメる記述を見てきたのですが、イマイチその必要性についてナットクの行く根拠を見つけられていなかったのですが、この本を読んで心の底からナットクした次第です。

 この本は、又吉さんの回顧録というか、子どもの頃からの本との関わりから、芥川賞受賞作『火花』を執筆して前後のことも含めて書かれているのですが、その経験から「読書の効用」について語られます。

 冒頭では、何のために本を読むのかと問われると、「楽しいから」とミもフタもない言い方をされていますが、その問いにこの本1冊かけて向き合って、かなり深遠な「読書論」を展開されます。

 又吉さんは太宰治をかなり多く読んでこられたようなのですが、太宰が心中する直前のことに触れられていて、いろんな文学を接することを通して、どんな絶望的なことがあっても、自死することなく、「夜を乗り越える」糧を得ることができるのではないか、とおっしゃいます。

 「自死」という極限状況を例に取られていますが、人生の中のあらゆる局面で、文学から得た「教訓」を活かせるんじゃないか…ただ単に知識レベルのことを事実として述べるのではなくて、人の営みの中での描写を経ることによって、ようやく人の心に膾炙されるものになり得るのではないかということで、ようやくワタクシも純文学を読む意義が、文字通り“腑に落ちた”次第でした。

 

仕事人生のリセットボタン/為末大/中原淳

 

 

 東大で人材開発について研究されている中原さんが、「侍ハードラー」為末さんの半生を検証しながら人生の“ターニングポイント”における「リセットボタン」について語られます。

 会社勤めだと明確に表れにくいのですが、長いキャリアの中でいくつかの“ターニングポイント”があり、その時の対処がその後の人生を大きく変える可能性があるわけですが、そういう時に如何に上手に「リセットボタン」を押せるかに掛かっているようです。

 そういう“ターニングポイント”が一番顕著に表れやすいのがアスリートだということで、為末さんのキャリアを題材に「リセットボタン」の押し方を検証されます。

 ずっと読んでると、単なる為末さんのクロニクルに思えてきて、オモシロいからそれはそれでいいのですが、中原センセイ自身が何のためにこんな本を企画したんだろう…というギモンを抱えつつ読み進みましたが、あまり明確に教訓めいたことをまとめるワケではないのですが、何となく最後の方になってナットクしたような気になった感じです。

 まあ、ちょっと隔靴掻痒感が無くはないんですが…

 

 

駅伝・駒澤大はなぜ、あの声でスイッチが入るのか/大八木弘明

 

 

 箱根駅伝のシード権のボーダーライン上を行き来していた駒澤大を常勝の強豪に押し上げた大八木監督の回顧録です。

 編集者的には、大八木監督が箱根駅伝などで選手に向かって飛ばす「男だろ!」という有名なゲキをタイトルにしたかったようなのですが、そのコトバが独り歩きしている現状を好ましく思っていない大八木監督に断られて、サブタイトルに含めるに留めたようです。

 青学大の原監督のようにドラマチックに盛り上げるという感じではなくて、訥々と実績を積み上げるといった感じが人柄を伺わせます。

 大八木監督自身は現役時代、家庭の事情で一時は憧れた箱根駅伝を諦めて実業団に所属しますが、どうしても夢を諦めきれずに公務員として働きながら、駒澤大の夜間に通い、箱根駅伝出走の夢を叶えた苦労人だということです。

 だからなのか、競技については選手に厳しく接するものの、寄り添うような姿勢が感じられ、そういうところが駒澤大を強豪に押し上げた要因の一つなのかも知れません。

 最近は青学大東洋大の後塵を拝することになっている駒澤大ですが、夢を諦めなかった大八木監督のように復活してくるのかもしれません。

 

 

走れ!マンガ家ひぃこらサブスリー/みやすのんき

 

 

 『やるっきゃ騎士』などの代表作を持つマンガ家の方がサブスリーランナーになるまでの取組を紹介されて本です。

 この方、子どもの頃からカラダが弱くて体育の授業もロクに受けていなった上に、マンガ家という職業柄、コモリっきりの生活が長かったということですが、マラソンを始めてからわずか1年半でサブスリーを達成したということで、それなりに運動をしていたにも関わらず、マラソンを始めて7年以上経っているにも関わらず、泣く泣くサブフォー達成がやっとのワタクシとしては、何とかブレイクスルーのヒントがないかと思って手にしたワケです。

 マンガ家の方の著書ということで、カルめの内容を想像していたのですが、元々ハンデを背負っているという自覚からか、かなり冷静な分析を通した上で、できる限り最短距離での達成を目指そうということで、かなり科学的なアプローチも含めて、練りに練ったプロセスとなっています。

 元々運動をしていなかったということなのに、月間400kmのトレーニングをされているということですが、そういう人でも故障を避けながらそれだけのトレーニングが積めるのだというところにシゲキを受けました。

 50歳代前半がサブスリーの統計的な期限だということで、ワタクシも50代リーチの今となっては、残された時間は短いのですが、何とか希望をもってトライしたいモノです。

 

人を奮い立たせるリーダーの力/平尾誠二

 

平尾誠二 人を奮い立たせるリーダーの力

平尾誠二 人を奮い立たせるリーダーの力

 

 

 2016年に惜しまれながら亡くなった“ミスターラグビー”平尾さんの死後に、生前の著書のリーダー論に関する部分を中心としたエッセンスをまとめるカタチで出版された本です。
 
 平尾さんは、「スクールウォーズ」のモデルとなったことで知られる伏見工ラグビー部での全国制覇、同志社大学での大学選手権4連覇、神戸製鋼での日本選手権7連覇など輝かしい実績をモノにされるなど類稀な実績を上げられたラガーマンなのですが、その原動力となったのが、根性論がハバを利かせていた当時のスポーツ界、特にその色彩の濃かったラグビー界において、純粋にそのスポーツを「楽しむ」ことにより、よりその競技に関するスキルを陶冶していくことで、より高みに到達しようという、当時では画期的なアプローチで成果を残したことで知られます。

 ワタクシ自身も平尾さんのそういう考え方に陶酔して、著書を読みふけった時期があり、このブログでも数多く著書を紹介してきました。

 まだまだ平尾さんが理想とするスポーツのあり方の理想には遠いものの、徐々にスポーツを「楽しむ」ことの効用は理解されてきているようには思えますが、逆にその「反作用」と言える現象もあり、平尾さん自身が晩年の著書で、真逆とも言える「警告」を発しなければならない状況にもなっていたりして、なかなか真意が具現化されたとは言えないようです。

 でも、残された我々は、スポーツの強化という意味だけではなく、日本人の人生を豊かにするという意味でも、平尾さんの真意を問い続けて行かなければならないようです。

 

英語がほとんど話せない人でも1カ月でそこそこ話せるようになる本/山西治男

 

  英語と日本語の構造の差に着目して「3つの箱」 英語と日本語の構造の差に着目して「3つの箱」というツールを駆使して、その「差」を克服しようと言う英会話習得本です。


 「3つの箱」というのが、

  1.誰が

  2.どうする

  3.何を
ということで、主語、動詞、それ以外を意識して文を組み立てるトレーニングを短い文から始めて徐々に長くしていくことで、ある程度話せるようにしようというコンセプトです。


 主語の部分のエピソードはちょっと極端で、盛り過ぎ感が否めないのですが、動詞の部分のエピソードについては、日本語と違い主語を明確にすることからくる動詞のニュアンスの違いについてトライアル&エラーを繰り返すことで身に付けていこうというのは、いい姿勢だと思います。


 ちょっと例示に極端なところもあり、イラスト満載でカルい印象を受けガチですが、こういうトレーニングを淡々とこなすことで、十分コミュニケーションスキルを身に付けることができるはずです。

129円のマンツーマン英会話/加藤智久

 

129円のマンツーマン英会話 スカイプ英語勉強法

129円のマンツーマン英会話 スカイプ英語勉強法

 

 

 レアジョブってオンライン英会話レッスンを提供する会社を経営される方の著書です。

 まあ当然自社のサービスの宣伝の一環として書かれたであろう本なんで、オンライン英会話受講をススメる方向性が紹介されるワケですが、ある意味で“究極の英語勉強法”と言えるのも否定し難い所ではあります。

 というのも、やっぱり直に英語に触れること、特に発信を如何に頻繁に行うかということが上達に直結するのは間違いなくて、そういう意味で、1時間当たりたったの129円からレッスンを受講できるというのは、間違いなく最上の素材だと言えます。

 フィリピン人が教えて大丈夫なのかとか、オンライン越しで大丈夫なのかとかってゴタクを並べる前に、そんなに投資額も多くないことだし、それなりにやってみた上でモンクを言ってみたら?ということだと思います。