お笑いコンビ・ピースの片割れでありながら、芥川賞作家となったことで話題になった又吉さんによる「読書論」です。
以前から様々な読書本でで純文学を読むことをススメる記述を見てきたのですが、イマイチその必要性についてナットクの行く根拠を見つけられていなかったのですが、この本を読んで心の底からナットクした次第です。
この本は、又吉さんの回顧録というか、子どもの頃からの本との関わりから、芥川賞受賞作『火花』を執筆して前後のことも含めて書かれているのですが、その経験から「読書の効用」について語られます。
冒頭では、何のために本を読むのかと問われると、「楽しいから」とミもフタもない言い方をされていますが、その問いにこの本1冊かけて向き合って、かなり深遠な「読書論」を展開されます。
又吉さんは太宰治をかなり多く読んでこられたようなのですが、太宰が心中する直前のことに触れられていて、いろんな文学を接することを通して、どんな絶望的なことがあっても、自死することなく、「夜を乗り越える」糧を得ることができるのではないか、とおっしゃいます。
「自死」という極限状況を例に取られていますが、人生の中のあらゆる局面で、文学から得た「教訓」を活かせるんじゃないか…ただ単に知識レベルのことを事実として述べるのではなくて、人の営みの中での描写を経ることによって、ようやく人の心に膾炙されるものになり得るのではないかということで、ようやくワタクシも純文学を読む意義が、文字通り“腑に落ちた”次第でした。