なぜか「いいアイデア」が次々出てくる人の思考法/軽部征夫

 最近の本って、構成がしっかりしていてちょっとした手がかりがあれば、
割と本全体にどんなことが書いてあったかっていうことがスルスル思い出
せるように工夫しているものが多いのですが、全部が全部そういう風にな
っているわけではなくて、著者自身が如何に読者に自分の考え方をモノに
してもらおうか、という熱意と、編集者が如何に読者目線で噛み砕いた編
集をできるかにかかっていて、時折、そういう工夫が感じられず、著者が
書き散らしたまま、何が言いたいのかよく分からない本が見受けられます。

 特に、割と年配で、「エラい」著者にそういう傾向が強いように思われ
ます。

 端的に言うとこの本はその好例ということで、「いいアイデア」を出す
ことがメインテーマのはずですが、効率的な時間の使い方がどうのこうの
とか、リフレッシュがどうのこうのとか、確かに「アイデアを出す」ため
に大事なことなのかもしれませんが、それぞれの論点が「いいアイデア
出す」ということに、どう収斂されているのかということが、読者に丸投
げにされていて、不親切だなあ、と感じます。

 読者って、作者が思うほど「バカ」じゃないと同時に、作者が思うほど
「賢明」でもないのですよ。

 知的生きかた文庫の一連の作品群って、暇つぶしによく手に取るんですが、
そういう意味で、いい作品と、こういう不親切な作品との落差が激しい気が
します。

 是非、編集者の方には、そういう読者目線を忘れずに、著者と読者の橋
渡しをしてもらいたいものですね。