大人のための昭和史入門/半藤一利、船橋洋一、出口治朗他

 

 

 最近、藤原和博さんの『本を読む人だけが手にするもの』の推薦図書の影響を受けて昭和史に関する本を立て続けに手に取っているのですが、この本は「戦争はダメだ」とか、そういう教条主義的な歴史観に捉われず、オトナがフラットな視点で昭和史を見つめようという趣旨で編集された本のようです。

 執筆陣を見ると、『昭和史 1926-1945』の半藤さん、歴史関係の魅力的な著作も多い出口さん、そしてロシアを語らせたら日本では右に出るものはいないと思われる「知の怪人」佐藤優さんなど、ワタクシがハマって読んでいる人たちが目白押しで、相当期待をして手に取ったのですが、結論から言うと肩透しでした…

 というのも、15本ものトピックについて、それぞれ別の執筆者が書かれているのですが、ビシッと骨太の編集方針が貫かれている訳ではなく、それぞれが、それぞれのスタンスで書かれている印象で、全体を通してのメッセージというものが希薄なのと、執筆陣に学者センセイが多いことで、些末に陥っている部分もあり、半藤さんの『昭和史』を読んだ時に感じた、色んな意味での感情のうねりみ隊なモノは、ついぞ感じることが出来ませんでした。

 ただ、冒頭の半藤さん、出口さんらの対談は、

  ・敗戦は、決して軍部の暴走だけに帰するものではないこと
  ・日本は、国家全体としての「グランドデザイン」を持てなかったこと
  ・急速に近代化を図った歪みが、一気に噴出したことが否めないこと

なんかが印象的な指摘でした。

 後は、眞嶋亜有さんと言う方が書かれていたトピックで指摘されていたのですが、戦争中「鬼畜米英」と言ったいたにもかかわらず、戦後、アメリカ礼賛となったことについて、日本人の節操のなさを指摘する声があるのですが、その指摘自体に誤解があって、日本国内の心底には、ずっと欧米への憧憬があって、行き掛り上仕方なく、反欧米のフリをしていたに過ぎない、と言及されていて、ミョーにナットクさせられました。