新幹線が日本社会の発展に果たしてきた役割を語った本です。
“ナショナリズム”とあるのは2つの側面があって、1つは戦後の荒廃の中からわずか10年余りで世界に先駆けて高速鉄道を実現したことで日本人のプライドを“復活”させたということと、2つ目は、高速鉄道のネットワークを巡らせることで国としての一体感の醸成に寄与することとなり、そのような一体感が災害などからのいち早い復興を促す力ともなったという側面も指摘されています。
先日紹介した『鉄道復権』で宇都宮さんも指摘されていたように、日本では鉄道の運営について収支のバランスの評価を重視しすぎる傾向が強く、それ以外のメリット…地域開発や人の流れの形成など…について軽視され過ぎていることが、ここでも指摘されています。
例えばこの本で取り上げられているのが、九州新幹線開業による熊本へのインパクトで、利用者が1年で1.4倍になるなど、活性化に大きく貢献しており、こういう側面を勘案することは単に単年度収支を合わせるよりも遥かに大きなインパクトがあると言えます。
あまりムダにモノを作るというのは昨今難しい部分もあるんでしょうけど、もっと広い視野で効果を測る指標が求められるようです。