NHK Eテレの番組『100分de名著』で出口さんが『西遊記』を紹介された時の様子をまとめたムックです。
ストーリーそのものよりも『西遊記』が生まれた背景など、作品をとりまく状況を中心に紹介されたモノになっています。
『西遊記』は唐の時代の高僧である玄奘三蔵が当時の国禁を犯して現在のインドに赴き、膨大な経典を持ち帰った際の報告書である『大唐西域記』が元になっているということなのですが、それを講談として語られていたものをまとめたものだということです。
玄奘の西域への旅は、いろんな意味でかなりの危険を伴うものだったとのですが、それが可能だったのは、インドではハルシャ・ヴァルダナ、唐では中国史上屈指の名君の一人と言われる太宗皇帝の在位期間で、双方の政情がインド、中国史上でも極めて安定していたからだということです。
元々そういう冒険的な要素のある旅だったということでもあったモノが、講談になってウケ狙い的な要素もあり、表現がどんどん大げさになって行き、現在の我々も知るような冒険大活劇となったようです。
この本で出口さんが再三強調されているのが、古典などを読む時に時代背景や取り巻く状況を踏まえた上に読むと、より理解が深まるということで、出口さんの読書の“作法”の一端に触れた気がして、個人的になかなか有意義な本でした。