人類5000年史IV/出口治明

 

 

 出口さんのライフワーク『人類5000年史』の第四弾で、1冊目、2冊目と1000年刻みで第三弾で500年が対象になったのが、今回はさらに対象期間が短くなって1501年から1700年と200年がカバー範囲となっています。

 

 これまで中国とイスラム圏の内容が意外なほど多かったのですが、徐々にヨーロッパに関する内容が増えてきているのが印象的です。

 

 IIIで、その後の市民革命への萌芽がみられると言及しましたが、今回、権利の章典清教徒革命が取り上げられていますし、ルターやカルバンの宗教改革もこの時期ですし、次第にヨーロッパがリベラルな空気をまとい始めているのが注目で、個人的には三十年戦争講和条約として結ばれた、近代国際法の原点ともいわれるウェストファリア条約が印象的で、いよいよヨーロッパの存在感が増してきたように思えます。

 

 ただ、毎章末に提示されている期間の末時点でのGDPのシェアでは、1700年においても中国が22%を占めており、イスラム圏が15%弱とシェアを落としていつつも、ヨーロッパ諸国のシェアは合算しても17%弱で、中国のシェアの大きさが印象的なのですが、それよりもムガール朝などのインドが24.4%を占めていたというのが、意外でオドロキですが、出口さんのこういう視点での歴史の検証というのは、やはり際立っているなぁ、と改めて感じます。

 

 この時期日本では、戦国時代から徳川幕府発足による太平となり、鎖国に至るワケですが、江戸期にキビシイ意見を示される出口さんは、その後、国民国家の形成や産業革命という大転換期を迎える世界において、交流を閉ざしていたことのマイナス面を改めて指摘されているのが「らしい」なぁ、と思います。

 

 いよいよ、次巻は1701-1900ということで、日本の登場シーンも多くなりなって、世界史もキュッと集約された感が出て来ますし、出口さんが脳梗塞から復活されて無事出版されてよかったということで、早めに手に取ってみたいと思います。