地図から消えるローカル線/新谷幸太郎

 

 

 野村総合研究所の社内有志である「鉄道ビジネス検討チーム」が自主研究のレポートして赤字運営に喘ぐローカル線の今後について語られた内容をまとめられたモノだということです。

 

 昨年位から再びローカル線運営の危機についてあちこちで語られ始めたようですが、JR移管後に一定の「整理」が行われて以降、黒字路線の収益で赤字路線の「補填」をするという自転車操業的なやりくりで何とか生き長らえさせてきたローカル線ですが、コロナ禍で収益源だった大都市圏の路線も一時的とは言いながら通勤での需要が激減したことでイッキに赤字となってしまい、ローカル線への補填もままならなくなったことがその要因のようです。

 

 ただやはり、それ程普段利用していないにも関わらず、ローカル線の地元では鉄道存続に対する要望は強い様で、JRと地元住民・自治体との綱引きが繰り広げられているということです。

 

 JR移管時とは状況が変わってきているのが、かつてはある程度のニーズがあった路線でも国内の全体的な人口減少もあって、赤字路線が拡大していっているということで、人口減少問題を提起して大ベストセラーとなった『未来の年表』でもあったように、交通インフラでいち早くそういう弊害が露わになっているようです。

 

 この本では触れられていませんが、運送業のドライバーについての2024年問題もあって、かつてはカンタンにバス転換といっていたのも、そうそう気軽にはそういう選択を取れないという事情もあり、日本全体で社会インフラとしての交通ネットワークをどうするのかということを考えていかなければならない時期に来ているような気がします。

 

 ただ、少子化対策の一つもロクに出来ない昨今の政府に、そんなグランドデザインを期待することはとてもできそうにありませんが…