未来の年表 業界大変化/河合雅司

 

 

 2018年出版の『未来の年表』以来、近未来に確実に訪れる日本の人口減少がもたらす変化について警告を続けてきた河合さんの著書ですが、今回は個別のビジネスに訪れる変化について語られています。

 

 JRがローカル線を維持できなくなる可能性について再三苦境を訴えているように、すでに人口減少が顕著な地方で見られる現象が、日本の多くの地域で起こるはずだということですが、鉄道はおろか、各家庭が個別で調達する自家用車ですら、ガソリンスタンドがなくなる地域が出てきたり、自動車整備工場がなくなる地域が増えたりということで、それすら満足に維持できなくなる状況が見通せるということです。

 

 また、不可欠のライフラインである水道やガスの調達についても、その維持のためのコストが異様に高まってしまうということで、このままでは人口が減少する地域に住み続けることが困難な将来がやってくるということです。

 

 そういった中で、河合さんがこのシリーズの中で再三おっしゃっている「戦略的に縮む」という大方針が個別のビジネスにも当てはまるようです。

 

 嗜好の多様化によって、規模の経済を求めるビジネスの有効性がなくなりつつあることが叫ばれて久しいにも関わらず、それでも少なからぬ企業においてそういう志向が継続してしまっているワケですが、そういうビジネスモデルの命脈はすぐそこにまでやってきており、高付加価値モデルへの転換を図るか、死か、というところまで来ているようです。

 

 あとがきで「人口減少対策とは「夏休みの宿題」のようなものである。いつかはやらなければならないと頭で分かっていても、ついつい後回しにしがちだ。」とおっしゃっていて、ようやく岸田政権は少子化対策とか言っていますが、最早少子化対策は手遅れで、人口は確実に減る、ということを念頭に置いて、それにどう対応するのかにフォーカスすべきなのですが、河合さん的に言うと、対策が2周も3周も遅れているワケですが、対策が打てるうちにその遅れに政治家たちが気付いてくれないか、と祈るような想いを抱いてしまいます…