終着駅/宮脇俊三

 

 

 黄補填的にこのブログでは実用書がメインなんで、趣味の色合いの濃い本は避けてはいるのですが、最近、結構音楽モノだったり、「鉄」だったり、マラソンだったりとあんまり「実用」的なモノも多くなってきているので、まぁ、いいか!?ってことで、「鉄」趣味全開の本を取り上げることにします。

 

 これまで、酒井順子さんの「鉄子」本も紹介していたのも関わらず、師匠筋にあたる宮脇俊三さんの本を取り上げるのは実は初めてだったことに我ながら驚いていますが、「乗り鉄」趣味の草分けの一人とも言える方で、鉄道趣味と文学のクロスオーバーで高い評価を受ける紀行作家のひとりです。

 

 この本は2009年に出版されたモノで、2003年に亡くなられた宮脇さんの遺稿集ということになるのですが、紀行作家となられる前は中央公論社の名編集者としても知られる宮脇さんは、遺稿集について、作家としては世に出てほしくなかった原稿も遺族がかき集めて出版してしまう、と生前苦言を呈していたことを、あとがきでお嬢様である灯子さんが明かしておられますが、なかなかに変わらぬ宮脇節が展開されます。

 

 デビュー作である『時刻表2万キロ』を書かれた1979年前後のモノから無くなられる直前の2002年のモノまでカバーされているのですが、宮脇さんが積極的に執筆されていた時期は、まだ国鉄がJRになる前で、全国くまなく路線が張り巡らされており、今や一往復だけとなった夜行列車も全国隅々まで走っていたということで、乗り鉄としては嫌が応にも郷愁を掻き立てられます。

 

 確かに新幹線が張り巡らされて便利になった側面はあるのですが、信越本線北陸本線といったかつての大幹線も寸断されて、在来線はコマ切れとなった現在、『最長片道切符の旅』もはるか昔の夢となってしまい、ついつい昔語りに身を委ねてしまいました…