人類5000年史III/出口治明

 

 

 出口さんのライフワーク『人類5000年史』の第三弾で、1冊目、2冊目と1000年刻みだったのですが、今回の対象は1000年から1500年と500年が範囲となっています。

 

 世界史の知識が乏しいワタクシとしては、段々とついていくのがキビシくなってきつつあって、割と世界中の歴史の同時代性を強く意識されているので、唐突に別の国のエピソードが出てくると言うこともあり、かなり戸惑うことが多くなってきました…

 

 この頃はやはり中国とイスラム諸国がヨーロッパ諸国に対して相当な先進性を誇っていたということで、特に中国についての記述が多くなっているのが印象的です。

 

 この期間は王朝で言うと、宋から元を経て明に至るということですが、宋代における統治機構の精緻さについて、摂関政治だった日本と比較して宋が近世だったとしたら当時の日本は古代と思えるくらいの差があるとおっしゃっていて、その先進性を強調されています。

 

 特に出口さんが『世界史の10人』でも取り上げていた王安石の治世の先進性について紹介されていますが、経済政策や軍事に関わるところまでかなり広範な政策を整合性を以って実施されている凄みについて触れられていて、さらには自身が死去した後も自身の意図した政策を継続できるようにデザインされていたということで、王安石の政策が完全に実施され続けていたらどんな先進国家ができていたのだろう…と想いを馳せられていて、かなり傾倒されていることがうかがえます。

 

 また同じく『世界史の10人』の中で取り上げられているモンゴル帝国の全盛期の指導者クビライ・ハーンについてもかなり紙幅を割いて語られていますが、史上最大の世界帝国を築き上げた要因について、現代のグローバリズムにもつながる、当時ではまれに見るダイバーシティを飲み込む世界観を賞賛されているのが印象的です。

 

 この頃のイスラム帝国については、モンゴル帝国に征服されていた時期も長かったこともあって、この本での言及は『人類5000年史II 』と比べると控えめです…

 

 ヨーロッパについては、日本ほどではないにせよ、中国と比べるとかなり遅れていたことは否めないのですが、英国におけるマグナカルタなど、後年の民主主義につながる考え方の萌芽が見られることに言及されているのが印象的です。

 

 なかなかツラくなってきていますが、頑張って1500~1700年を扱う『人類5000年史IV 』にもトライします。