最期の日本史/本郷和人

 

 

 本郷センセイの日本史本ですが、今回のテーマは「死」です。

 

 2023年の元旦出版ということなので、おそらくコロナ禍を経ての死生観みたいなモノもあっての出版だと思われ、あまり日本史とは関係ないのですが、コロナ禍で日本以外の欧米諸国などは、死を想うという「メメント・モリ」という考えがあって、一定「死」を仕方がないモノとして考えるところがあり、日本のように「人の命は地球より重い」みたいなことが言われることはなかったので、比較的早めに通常の経済生活に戻ろうというインセンティブは働きやすかったという言及は興味深いところです。

 

 そういう日本人の「死」に対する考え方や死生観みたいなモノを歴史上の事実からの類推や文献などからふんだんに紹介されていて、今までの本郷センセイの日本史本の中では、個人的には際立って興味深い内容となっています。

 

 個人的に特に興味深かったのが、主に皇室における死に対する「穢れ」という感覚で、平安時代などはもう死を免れないというような病人が出ると、手当てをするどころか邸内で死なれると困るとばかりに、遠いところに放置しに行くという、ちょっと現代の感覚からすると考えにくい冷酷な対応が常識だったということで、本郷センセイご自身が時代考証をされた大河ドラマ平清盛』において、朝廷内で清盛の母が殺害されるシーンについて、あんなことはあり得ないと大ブーイングを浴びたようですが、そういう死に対する不浄観みたいなモノが、今なお死を語ることをタブー視する日本人の死生観に大きな影響を与えていることがうかがえます。

 

 それ以外にも、切腹についての考証や、不遇の死を遂げた人が怨霊となるとされることについての考え方、戦国期の首級の扱いなど、日本人の根底となる死生観についての様々な興味深いトピックが満載ですので、日本人の在り方に興味のある方は、是非とも一読の程を!