ここ数年、凄まじい勢いで著書を出版されている本郷センセイですが、今回のテーマは「黒幕」です。
この本では16人の「黒幕」を取り上げられているのですが、「黒幕」というだけあって、それなりに歴史への関心があるワタクシでも半数以上は初めて名前を聞くような人々を取り上げているのですが、名前を知っている西郷隆盛でも「黒幕」という捉え方はあまりされないところで、なかなかに興味深いところです。
冒頭で宇多天皇を取り上げられているのが本郷センセイらしいトリッキーな感じですが、本来正統的な権力者であるはずの天皇を「黒幕」として取り上げるのは、当時権勢を誇っていた藤原家の摂関政治に対して、天皇親政を志向したということで「黒幕」とされているのがニヤリとさせられます。
「黒幕」というと文字通りどこかブラックというか、アヤシい印象がありますが、この本で個人的に興味深かったのが、それぞれ鎌倉幕府、室町幕府、江戸幕府の屋台骨を築き上げた中原親能、細川頼之、伊奈忠次を取り上げられているところで、どちらかというとただ単に表舞台に出なかった「黒子」といった方がふさわしいのかも!?という働きをした方々にスポットを当てているところに本郷センセイの見識を感じます。
特にその中でも鎌倉幕府の制度設計を担ったと紹介されている中原親能ですが、御家人の中で権力基盤を固めつつ、統治機能については下級貴族の経験を活用するという源頼朝の慧眼もさることながら、そういった任務を担った大江広元と異なりあまりその名前が取りざたされることがないながらも、地味に見えるのですが鎌倉幕府の文書行政の在り方を整備されたということで、鎌倉幕府の基礎を整備したということにとどまらず、その後700年近く続くことになる武家の政権の礎を築いたともいえる業績にも関わらず、あまり取りざたされることがないことがむしろナゾだったりもします。
ということで、そういう興味深い隠れた歴史が満載ですので、歴史好きの方は是非一読の程を!