国難のインテリジェンス/佐藤優

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんが各界の名だたる論客との対談を集めた本です。

 

 佐藤さんの対談本というと、あるテーマでお一人の方とガッツリまる一冊かけて対談される形式が多い印象で、その中の多くで相手を圧倒するモノを思い浮かべますが、この本は週刊新潮の「佐藤優の頂上対決」と題した対談の連載を集めた本だということです。

 

 それぞれの対談が新書本で10数ページのボリュームだということもあり、概ね対談相手の専門分野に寄り添ったモノとなっていて、驚くほど佐藤さんの色が希薄なのに驚きました。

 

 ただ、対談相手というのが週刊誌の連載ということもあって、AI「東ロボくん」を東大受験に挑戦させた過程を紹介した『AI vs. 教科書が読めない子供たち』の新井紀子さん、『未来の年表』の河合雅司さん、『下流社会』の三浦展さんなど名だたるベストセラーの作者が目白押しの豪華版です。

 

 中にはあまり佐藤さんが普段取り上げないイノベーション論の専門家などとの対談も含まれていますが、やはり近年佐藤さんが熱心に取り組まれている教育論についてのモノが興味深く、このブログでも『18歳の君に贈る言葉』を紹介した超名門進学校として知られる開成中学校・高等学校の校長柳沢幸雄さんとの対談や、読解力について語られたAI研究家の新井紀子さんとの対談が印象的で、いつもの対談本に見られるよりもはるかにツッコミ具合は控えめながらも、エリート育成についての強い関心をうかがわせるツボを得た言及が印象的です。

 

 時には「うす味」の佐藤さんもいいモノですよ!?(笑)