知の武装/手嶋龍一、佐藤優

 

 

 昨日の『動乱のインテリジェンス』に引き続き、2013年出版の手嶋龍一さんと佐藤優さんのインテリジェンスに関する対談本の第3弾です。

 

 この本でも尖閣問題やTPP加盟交渉など具体的な外交的事象を取り上げた内容も見られますが、どちらかというとやはりインテリジェンスの在り方みたいなモノが中心に語られていて、ちょうどその頃に起きたスノーデン事件も題材として、インテリジェンス・オフィサーの資質みたいなモノも語られています。

 

 特に近代的なインテリジェンスの源流と言われるイギリスにおけるインテリジェンスの作法が「アート」に近いモノであるのに対し、アメリカでの作法は「技法」というのに近いという指摘が興味深く、インテリジェンスの作法においてはイギリスの影響下にあるというロシアで鍛えられた佐藤さんはアーティスティックな側面が強いようです。

 

 またインテリジェンス・オフィサーの資質として、当然胆力や知性・教養といったモノもあるのですが、魑魅魍魎の世界の中にあるとは言え、高い倫理観が要求されるようで、モラル(道徳性)とモラール(士気)がなくては、おカネの面やその他の欲望に溺れてしまうことになり、杉原千畝など名だたるインテリジェンス・オフィサーはことごとく高潔な人物だったということを指摘されています。

 

 伝統的な気質からして、日本人にはこういうインテリジェンス・オフィサーとして資質を備えた人は多かったと思われますが、昨今そういう活動があまり盛んではないのは、そういう意味での日本人の堕落という側面もあるのかもしれません…