動乱のインテリジェンス/佐藤優、手嶋龍一

 

 

 インテリジェンスについてのディープな対談本を多数出版されているお二方で、このブログでも再三紹介しておりますが、未読のモノがあったようですので、イッキに紹介していきたいと思います。

 

 この本は2012年の出版で、2006年出版の『インテリジェンス武器なき戦争』に続く、2冊目の対談本ということで、比較的近刊の『日韓激突』『菅政権と米中危機』では具体的な事象についてインテリジェンス的な観点から見るといった傾向が強いのに対し、比較的初期のコチラは、そもそもインテリジェンスとはどういうものなのか、という色彩の強いモノとなっています。

 

 例えば、何らかの首脳会談が開かれた際の写真を見て、その写真に「写っていない」モノに着目して、その会談の状況を類推するというテクを紹介されていて、通訳が一人しかいない場合、通訳をアサインした側に有利にコトが運びやすい状況になりがちだということです。

 

 この本で一番印象的だったのが、佐藤さんが再三指摘されている沖縄についての問題で、多くの日本人は中国が沖縄の領有権を主張することについてハナで笑うような態度をとると思いますが、先日紹介した『世界史のなかの近代日本』の琉球処分に関する内容で触れたように、かなりなし崩し的に併合したこともあって、沖縄戦など沖縄へのヒドい扱いに不満を蓄積されている方がは少なくないということで、ロシアがウクライナからクリミアなどの現地住民をけしかけて併合したように、中国が沖縄住民の不満にかこつけて、併合してしまうということは、中国の隆盛と日本の低調を思えば、この本が書かれた頃よりも、ずっと可能性が上がっているような気がします。

 

 そういった状況を10年以上前から指摘されていたお二方の慧眼は目を瞠るモノであり、時事的なトピックを扱いつつ、今なお傾聴すべき内容にあふれていることは、ただただオドロキです。