対決!日本史3/安部龍太郎、佐藤優

 

 

 『対決!日本史』で戦国時代から鎖国まで、『対決!日本史2』で幕末から維新までを扱った、歴史小説家の安部龍太郎さんと”知の怪人”佐藤優さんの日本史本ですが、今回は維新から日清戦争が範囲だそうです。

 

 当初は日露戦争までをカバーしようとしたようですが、あまりに話が盛り上がった挙句、日清戦争までとなったようです。

 

 この頃になると、敢えて日本史を世界史と対比しなくても、ある程度日本が世界に顔を出すようになるので、当初の意義みたいなものは薄れるところはあるのですが、やはりさすがはこのお二方、結構独自の視点が出てきて興味深いところです。

 

 日清戦争以降、世界デビューしてからわずか10数年の間に帝国主義のお作法を身に身に着けた様子を紹介されていますが、その思想的な背景として実は吉田松陰が挑戦を足掛かりにして中国に手を広げていく世界戦略みたいなモノを構想されていたということで、そのお弟子筋が忠実にその構想を辿って行ったという側面があるようです。

 

 その突破口として朝鮮への圧力を強めていくワケですが、ちょうど欧米列強との不平等条約の改正に取り組む苦難を味わう中で、同じことを朝鮮にして、不平等条約を押し付けるやり口に、お二方が口を極めて当時の対応を非難するところが印象的で、そのあたりから身の丈に合わない帝国主義の実践があって、日清戦争戦勝後の下関条約で調子に乗り過ぎた挙句、三国干渉を食らうというシッペ返しを体験しつつも、着実にお作法を身に着け、リッパに好戦的な国家となっていく過程が、後の悲劇を知る後世のモノとしては、やはりかなり残念に思えます。