哀しき半島国家韓国の結末/宮家邦彦

 

哀しき半島国家 韓国の結末 (PHP新書)

哀しき半島国家 韓国の結末 (PHP新書)

 

 

 先日、「知の怪人」佐藤優さんとの対談本である『世界史の大逆転』を紹介した宮家さんが2014年に書かれた韓国関連の本です。

 タイトルだけ見ると一連の“嫌韓本”のようですが、この本が出版された時に佐藤優さんが「一連の嫌韓本とは一線を画す」と絶賛されたということで手に取ってみたのですが、地政学的な観点からこれまでの朝鮮半島を取り巻く歴史を振り返った上で、今後の動向を予測するという内容で、元外交官である宮家さんが外交戦略策定の過程の一端を見せるかのようなところがあります。

 地政学的には朝鮮半島は中国と、かつての満洲国があった現在の中国の東北地方の動静に大きな影響を受けてきたということで、その3つの地域の動静を振り返っているのですが、特に中国において漢民族の強大な統一政権があるかどうかによって左右される
ところが大きいということです。

 そうした現代までの地政学的な動静を踏まえて今後の朝鮮半島の行く末を予測されるのですが、その中でも中国に漢民族による安定的な政権があるかどうか、ということを分けて考えられているとことに驚きます。

 現在の習近平政権の安定感を見ていると余計な心配だとツッコミたくなりますが、唐や明などの最盛期にもそう思っていたはずで、それも数百年で瓦解していまったワケですしね…

 ということで、以下の要素を組み合わせて24種類のシナリオを提示されます。

 ・中国に漢民族による強大な統一政権があるか?ないか?
 ・北朝鮮崩壊(ハードランディング or ソフトランディング)
 ・北朝鮮存続・金一族失脚(ハードランディング or ソフトランディング)
 ・北朝鮮南進・軍事侵攻

 かなり複雑で難解な内容なのですが、納得度はかなり高く、外交戦略というのはここまで細かい要素をパターンとして検討した上で検討されるのかな、ということをうかがわせます。

 ただ、基本的にこの本では韓国主導の統一が日本にとって好ましいモノだというスタンスを取られていますが、昨今ではその前提を覆して、自ら赤化統一を望むかのような文在寅というワケの分からないパラメータまで出てきていて、朝鮮半島の混迷は深ま
るばかりのような気がします。