もしも南北統一したら/辺真一

 

 

 朝鮮半島情勢ウォッチャーとして情報番組などにも多く出演されている辺真一が、韓国目線、朝鮮目線での半島情勢を紹介された本です。

 

 日本では韓国、朝鮮が統一したら中国寄りになって、日本が米中紛争の最前線となってしまうという論調が大勢ですし、そもそも南北統一というのは絵空事としかとらえられていないですが、”当事者”としての意識は相当異なっているということをこの本では再三強調されています。

 

 こういう感覚というのは分断を体験してみないとわからないということをクドいほど強調されていて、例えば自分の家族と分断されて会えない状態になったらどう考えるか!?とおっしゃっておられて、韓国側としても共産主義金王朝への反発はあるモノの、それでも統一というのは国家としての悲願であり、各々の国体を維持したままでの統一など、様々な形態が模索されていることは日本ではほとんど報道されることはありません。

 

 この本はかなり文在寅政権よりの論調なので、普段辺さんのテレビでのコメントと色合いが違う気がするので戸惑いますが、あくまでも文在寅政権目線もしくは金正恩政権目線ということで、特に北朝鮮で現時点では活用されていない”資源”の活用など、双方の得意分野の相乗効果で国力の飛躍的な向上のポテンシャルを秘めているなど、統一することに相当の合理性があるということを強調されています。

 

 また日本では北朝鮮を目の敵にしますが、北朝鮮側から見ると今のところアメリカの後ろ側に隠れているのでどうしようもないですが、日本単体で見ると必ずしも敵対の対象かというと、そうとは言い切れないという側面もあるようで、ホンネでは日本の技術力・資金力を役立ててもらいたいというところもあるようです。

 

 さらには、クーデター以前のミャンマーが”最後のフロンティア”という言い方をされましたが、埋蔵資源や観光資源のポテンシャルからするとミャンマーをしのぐポテンシャルがあり、ヨーロッパなどではその部分に注目する向きもあるようで、アメリカ追従一辺倒ではそういう流れに乗り遅れるというリスクもあるようです。

 

 まあ、かなりこちらも偏った見方であるという側面もあるので、必ずしも鵜呑みにはできない部分はありますが、現在の閉塞状況の打開という意味では、こういう見方をアタマの片隅に置いておいた方が、ずっと有意義かも知れないな、とは思わされた次第でした。