『バカの壁』の養老先生と、環境保護活動家としても知られる作家のC.W.ニコルとの対談を収められた本です。
以前紹介した『死の壁』で養老先生は日本人が普段の生活の中で「死」を意識しにくくなっていることの弊害を述べられていましたが、この本では「死」と同様多くの日本人が身近に感じることが少なくなっている「自然」との関わりをC.W.ニコルさんと嘆かれています。
当然、様々な努力を通じて人間は便利に心地よく過ごすことができるようになっているワケではありますが、そういう”進化”を通じて元々人間が持っていた機能が損なわれているということも間違いはないということで、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー的な反応というのは、元々自然と共に過ごしていれば身に付けていたはずの免疫反応をコントロールするはずのメカニズムができなかったからゆえの現象だということで、種としての生命力が、そういう面では弱体化していることのひとつの証左と言えそうです。
さらには、いじめや自殺といった社会性に関する現象も、自然が介在していれば、自分の人間関係だけにフォーカスせずに済んだかも知れず、追い詰められずに済んだんじゃないかという側面もあるようです。
ウチは自宅が割とイナカに近い所にあり、ムスメたちも都心に比べると随分と自然に触れる機会も多かったはずなのですが、それでも我々の子どもの頃から比べるとかなりのギャップがあり、色んな施策を通じてそういう機会を増やしていかないと、ちょっとアブナイ状況になってしまうんじゃないかと心配させられてしまいました。