定年消滅時代をどう生きるか/中原圭介

 

定年消滅時代をどう生きるか (講談社現代新書)

定年消滅時代をどう生きるか (講談社現代新書)

 

 

 タイトルだけ見ると“リタイア本”のように思えますが、この本は、もっと大きく今後の日本の雇用全体がどうなっていくかについて語られた本です。

 タイトルに「定年消滅」とありますが、今後人生100年時代を迎えるに当たって政府は企業に対し定年を70歳もしくは75歳に延長するよう求めることが想定されていますが、同時に経団連の中西会長やトヨタの豊田社長が年功序列制は最早維持できないとコメントされています。

 一見、相容れないモノに見えますが、中原さんは必ずしもそういうワケではないとおっしゃられています。

 どういうことかというと、それなりに膾炙に価値をもたらせる人はいくつになっても居てもらっていいんだけど、価値をもたらせない人には退場いただくということで、必ずしもずっとその企業にいるということを意味しているワケではなくて、自分が価値をもたらすことができる企業にどんどん移っていくということを意味しているということです。

 それだけに常に自分の価値を高めていかなくてはいけないのですが、日本の学生は未だそういう自覚に乏しいようで、企業は最早人材を育てる余裕もその気も無い中で、自分で自分の価値を高めていかないといけない反面、学生たちはスマホを代表とするITの普及で持てる知性を著しく低下させていることを指摘されています。

 アメリカの大学生の10分の1以下しか本を読んでない日本の平均的な学生たちは、今後のこういった情勢の中で、とても企業が求める人材とはなり得ないことを危惧しておられて、ちゃんとそういう危機感を持って、自分の価値を高めていくような活動を自律的にやっていかなくては、海外からの有能な人材に職を奪われますし、日本企業としても従来型の雇用制度を変えられないようではグローバルな市場の中で生き残っていけないということで、今度こそホントに日本的な雇用慣行は解体されざるを得ないようです…