世界史に学ぶコロナ時代を生きる知恵/出口治明、鹿島茂

 

 

 コロナ禍以降、感染対策やアフターコロナの世界について歴史から学ぶ姿勢を再三提唱されている出口さんですが、こちらの本はフランス文学者の鹿島茂さんと感染症に触れた過去の文学などを通して、感染症対策とコロナ後の世界を占った文芸春秋での対談をまとめたモノです。

 

 コロナ禍の蔓延にまつわる報道では、行き過ぎたグローバリズムが世界的な感染をもたらしたというネガティブなものも見られましたが、お二方はそのことについて、コロンブスアメリカを”発見”した際に感染症を持ち込み、ネイティブアメリカンに壊滅的な打撃を与えた事例を紹介していますが、確かにそういう弊害はあるものの、そういう現象は、ある意味必要悪であり、地域間の交流の拡大が人類の繁栄を支えてきたという側面があり、江戸時代の鎖国の経験からかとかく閉鎖的な方向に向かいがちな日本人が、コロナ後にそういう方向に向かってしまうことに警鐘を鳴らされています。

 

 アフターコロナの社会について、日本の就業環境やライフスタイルなどあらゆる側面に変化をもたらす可能性について触れられているのが興味深く、女性がパートナーになる男性を選ぶ場合に、これまでだと仕事ができておカネを稼げる男性を選ぼうとしていたのに対し、在宅勤務や週休3日など、家で過ごす時間が長くなるとキチンと家事を担えるような人を選ぶようになるんじゃないかとか、という観点がオモシロかったです。

 

 また、通勤負荷の軽減や就業時間の短縮による副業の活性化なども期待でき、そのことが複眼的な人材を育成する可能性にも指摘されており、アフターコロナではそういう意味での活性化を促すような状況を期待したいところです。