新世紀「コロナ後」を生き抜く/佐藤優

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんが英国の歴史学者エリック・ホブズボームの歴史書『20世紀の歴史』とアルベール・カミュの小説『ペスト』を読み解くことで、昨今のコロナ禍を取り巻く状況の本質をつかもうという主旨のオンライン講座の内容をまとめた本です。

 

 佐藤さんはこの手の古典といわれる名著を読み解く講座をまとめた本を何冊か出版されていますが、そういう解釈を必要とする本だけに、相当難解な内容のモノが多いのですが、この本は現在我々が体験しつつあるコロナ禍の状況が補助線となって、多分難解な本なんでしょうけど、それなりに理解できているような気がします。

 

 『ペスト』に描かれているキリスト教の教えをベースにした感染症に向き合う考え方も、コロナ禍の昨今で興味深いところではありますが、個人的にはコロナ禍の歴史的な意義とか、民主主義とか全体主義といった政体の違いによるコロナ禍への対応の意義などについての内容に興味をそそられました。

 

 日本にいるとスウェーデンのように積極的にコロナ禍の抑制に動かないという考え方はなかなか理解しにくいのですが、そういう部分については戦前には日本が全体主義的な政体であったことと関係があるようで、現在は民主主義国家であっても、自由の概念が少し弱いところがあるようで、人々の間にも積極的に介入してもらいたいという意識が働くようです。

 

 この本、こういうモノの見方があるのか!?と目からウロコ体験が、いつもの佐藤さんの本と比べてもあまりに多すぎて、その魅力を全然お伝えできていない文章になってしまっていますが、今後の社会を考える上で是非とも一読いただきたい一冊です。