メンタルの強化書/佐藤優

 

 

 最近は割と即物的な実用書に否定的な見方をされることが多い”知の怪人”佐藤優さんなのですが、やはり編集者からはそういう主旨の著書を求められることが多いようで、特に検察に512日間も拘留されながらメンタルが破たんすることが無かった強靭さから、メンタル関連の著書を求められることが多かったようで、この本の出版につながったようです。

 

 冒頭で佐藤さんは、自分の面たる強度について強くも無ければ弱くもないとおっしゃっているのですが、512日も検察の拘留されてメンタルが破壊されなかった時点で十分強靭なんですって!

 

 特に会社でムチャ振りされがちな人をターゲットにされているように思えるのですが、昨今はそういうムチャ振りをしてその成果を掠め取ろうとするような「下品」な人が跋扈しやすいような状況が蔓延しているようですが、そんな中でムチャ振りされやすい「上品」な人たちが、それでも強く生きて行けるような方策を紹介されています。

 

 バブル以前の日本企業では、家族的な雰囲気があって、そういう他人の成果を掠め取ろうとするような人は、なかなか信用されにくいような状況だったワケですが、ヨコのつながりの希薄になった昨今の日本企業ではむしろそういうことが成功要因につながることもあって殺伐とした状況になり、日本企業における人と人とのつながりが希薄になったことで、多くの人がメンタル面での困難に晒されるようになったようです。

 

 最早企業内による人と人とのつながりが期待できない状況で、本来人間が人と人とのつながりを求める存在であることから、地縁や血縁に基づくコミュニティだったり、ある共通の目的を求めるアソシエーションといったつながりを個人的に求めることが、メンタル的な平穏を求める上で最も重要だとおっしゃいます。

 

 そういう状況になって宗教の重要性も高まっているようで、佐藤さん自身長期間にわたる拘留を堪え切れたのも、ご自身の振興があったからだとおっしゃっておられ、何らかのカタチでの宗教的な拠り所が大きな掬いなり得ることを指摘されています。

 

 さらには、ある程度客観的なモノの見方もメンタル面での波を低減させることにつながるようであり、多様な視点を持つことがメンタル面での安定に寄与するようで、そういう意味では読書もメンタルの強化につながるのかも知れません。