「衝動買い」が止まらない!/金子哲雄

 

「衝動買い」が止まらない!

「衝動買い」が止まらない!

 

 

 2012年に亡くなられた後に『僕の死に方』を出版されて、その凄絶な死に様に注目が集まった流通ジャーナリストの金子哲雄さんが生前提唱されていた非計画購買に対応するためのマーケティングについて、雑誌『商業界』に執筆された原稿を再構成された上で、没後に出版された本だということです。

 

 当然、原稿を執筆されていたのが2012年以前だということで、「はじめに」では、出版時点の2013年においても、多少その時の事情に即していない部分があることをエクスキューズされてはいるのですが、10年程度の時間が経った現在においても、金子さんの指摘というのは、今なお有効であるばかりか、より重要性が増している部分もあると思えます。

 

 というのも、情報過多で、基本的な購買欲というのはほとんど充足されている中で、マーケティングとして働きかけていくべきなのは、非計画購買、いわゆる衝動買いの部分だとおっしゃいます。

 

 いつ頃執筆されたのかは不明ですが、序章では「現代の買い物は7割が衝動買い」と題されていて、衝動買いへの対応の重要性を力説されていて、その後、消費者が衝動買いに至るメカニズムや、衝動買いを喚起する様々な動機に対応したマーケティングの方法論と、その成功例を紹介されています。

 

 「衝動買い」というと偶発的なイメージを抱きがちですが、そこには消費者が明確に意識していないけれども、潜在的に持っている欲望を刺激されることで購買につながっているということで、如何にしてその欲望を刺激するのかということをパターンごとに紹介されています。

 

 この本ではそれほど大きく取り上げておられませんが、類型のパートで言及されている「ライフスタイル」由来の「衝動買い」は昨今大きくクローズアップされているところでもあり、そういう意味でも金子さんの論の先進性を伺わせます。

 

 コトバは悪いですが、没後に遺稿の、いわゆる寄せ集めでこれだけの本を構成できるところに、金子さんの論の一貫性と先進性を強く感じさせられる本でした。