「逃げ恥」にみる結婚の経済学/白河桃子×是枝俊悟

 

 

 家族社会学者の山田昌弘さんとの共著『「婚活」時代』で「婚活」というコトバの走りとなった白河桃子さんが、社労士、CPFとして家計の分析などをされている是枝俊悟さんとともに、社会現象ともなったドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』で描かれた「契約結婚」を取り巻く状況を解説された本です。

 

 つい最近主演を務められた星野源さんと新垣結衣さんがホントに結婚することになったということで大きな話題となりましたが、よく言われる「草食男子」の恋愛模様とも言える「ムズキュン」や、「契約結婚」という形態が露わにした結婚制度の現況などが大きなインパクトをもたらすことになったようですが、そういう現象の背景を紹介されています。

 

 冒頭で、「婚活」の権化たるウェディング雑誌『ゼクシィ』が2017年に「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」とのCMの象徴的な意義を指摘されていて、これまで大半の人が結婚していた状況の、ある意味終結宣言的なモノだといえるということで、そういう時代に「契約結婚」という形態を提示したところにもバズる要素があったのかも知れません。

 

 そういう白河さんが担当される結婚の社会的な意義の変遷もオモシロいのですが、より興味をそそるのが、是枝さんが担当されている「逃げ恥」で描かれる結婚生活における家計での経済的な側面を細かく分析されているところで、みくりさんの当初の月給を19.4万円とされているところの正当性や、今後子供を持った場合、育児を伴った家事の場合には32.5万円程度の報酬が無いと見合わないとの試算をされており、家事労働のブラックぶりを実証されています。

 

 白河さんのパートでは、平匡さんの36歳にして童貞、百合さんの50歳代のバリキャリ処女といった描写と、それに即した現在の恋愛、結婚を取り巻く状況を紹介されていますが、ある意味ほとんどの人に取って”必須科目”だったはずの恋愛や結婚は、少なからぬ人たちに取って”不要”なモノになりつつあるということで、人生の中で単なる選択肢の一つでしかなくなっている状況が顕著となっているようです。

 

 モチロン、個人の選択ではあるので、そういう選択を妨げる言われはないんでしょうけど、少子化の流れというのは止められない流れになってしまいそうです…