教養としての焼肉大全/松浦達也

 

 

 冒頭で著者の松浦さんも編集者に提示されたタイトルについて「教養」からは相当のキョリがあると思われる「焼肉」?ということをおっしゃっていますが、何の何の、なかなかに含蓄の深いモノとなっています。

 

 焼肉というのは世界的に見ても非常に珍しい形態の料理ということなのですが、まずは料理の完成を食べ手に委ねるということと、比較的薄切りの肉を食べるということで、韓国と日本に特有の料理だということで、それだけに語るべきことが山盛りのようです。

 

 まずは焼肉の歴史から始まるのですが、元々は韓国併合で日本に移住してきた韓国人が「朝鮮料理」店を急増させたということなのですが、戦後に韓国人が「朝鮮料理店」という言い方を嫌ったということで、次第に中心的なメニューである焼肉をメインにして「焼肉店」を名乗って行く店が増えたが故の焼肉店の隆盛なんだそうです。

 

 こういう焼肉のウンチク本にありがちな部位ごとの説明は意外な程シンプルにされており、ただ主要な部位の焼き方、しかも厚みのバラエティごとに微に入り細に入り解説されており、特にタンについて極薄切りから超厚切りまでかなり細かく分類して紹介されているのが非常に参考になります。

 

 また、いい焼き肉店を判断する基準(敢えてネタバレしないでおきます…(笑))も紹介されているのと同時に、家庭での肉の焼き方のコツも紹介されていて、焼肉で思いつくことについては、概ねカバーされている気がします。

 

 特にクドい程に繰り返し語られているのが、安全性についてのトピックでレバーやユッケなどの生食はモチロン、焼き物であっても生肉を扱う専用のトングを決めておいて、オトナだけが焼くようにするなど、非常に深い配慮をされているのが印象的です。

 

 いやー、ちょっと眉にツバをつけながら手に取ってみましたが、これは非常に有意義な本なのですが、金欠の時には読まないように気を付けた方がいいです…(笑)