ラグビー質的観戦入門/廣瀬俊朗

 

 

 元ラグビー日本代表キャプテンの廣瀬さんが2019年日本W杯に向けて出版された『ラグビー知的観戦のすすめ』に続き、昨年のフランスW杯の観戦ガイド的な位置づけで出版されたモノです。

 

 前作が日本W杯を期にラグビー観戦に興味を寄せた「にわか」がターゲットになっていたのに比べ、それ以降観戦を続けたファンがターゲットになっているのか、なかなかに「深い」内容になっているのが印象的です。

 

 特に冒頭の章で、試合開始から終了までキックオフやスクラムラインアウトなどのセットプレイを中心に、選手がどういう意図をもってプレイしているのかを紹介されているのが非常に有用で、神戸製鋼の7連覇の時期から観戦していて、それなりに感染の経験も重ねて、ペナルティとかレフェリーが絡むところは理解できるワタクシも局面局面の意義についてはよくわかっていなかった部分があるので、かなりありがたい解説でした。

 

 また、ラグビーというかなりチームを構成する人数が多く、さらには昨今の代表チームは「多国籍軍」となり意思統一が難しいように思える中、如何に「同じ絵を見」て、局面局面での各選手の「判断」を迷いのないモノに落とし込んでいくか、というチーム戦略の形成についての方法論を、実際の試合における判断を元に解説されているのが印象的で、2022/2023シーズントップリーグレイオフ決勝の東京ベイvs埼玉戦で東京ベイ悲願の初優勝をもたらした決勝トライや、2003年オーストラリアW杯決勝におけるイングランド、こちらも悲願の初優勝をもたらしたウィルキンソンの未だに語り継がれる劇的な決勝ドロップゴールにおける選手間の意思統一の結実とも言えるシーンを実例として挙げられているので、ありありとその秘訣が理解できるのがありがたいところです。

 

 残念ながらフランスW杯では惜しくも決勝トーナメント進出を逃しましたが、日本W杯と比較すると準備段階で多くの問題を抱えていたにもかかわらず、かなり「惜しい」闘いだったと思えたのも確かで、再びイングランドW杯で南アフリカを破る「史上最大のアップセット」の立役者のエディ・ジョーンズをヘッドコーチに迎え、次のオーストラリアW杯に向けてどのように取り組んでいくのかを楽しみに見守りたいところです。