気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている/村瀬秀信

 

 

 『散歩の達人』誌で連載されている「絶頂チェーン店」というエッセイをまとめられた本です。

 

 飲食業のチェーン店というと通ぶりたり人たちから軽くみられたりすることが多いですが、様々なジャンルのメニューをリーズナブルな価格かつ安定した品質で提供してくれる店が多く、我々庶民としてはありがたい存在であり、多くの支持を集めているところだとは思います。

 

 この本では、味がどうとか、業界における位置づけがどうとかといった分析的なところは置いておいて、著者である村瀬さんのご経験から、そのチェーン店についつい足を向けてしまう理由というか、背景を中心に語られています。

 

 中にはロイヤル・ホストなど、ちょっと値が張るチェーン店も含まれて入るのですが、紹介されている主なチェーン店は、吉野家などの牛丼チェーンやサイゼリヤなどのリーズナブルなモノが多く、それだけに多くの人が「あるある」を実感できる内容になっているのかな!?という気がします。

 

 ワタクシ自身は訪問した経験がないのですが、ピザチェーンのシェーキーズについてのエッセイで、村瀬さんが学生当時平日限定で実施していた食べ放題について触れられていて、学生だったので食べ放題にありつけるのが試験で午前で学校が終わる時期だけだということで、そういう時期に学生が大挙して訪れて、壮絶な争奪戦が繰り広げられていた様子を紹介されているのが、悲しくも切実な「あるある」を感じさせます。

 

 チェーン店の繁栄というのが、それほど裕福ではなかった日本人が、次第におカネを持ち始めた時期に家族で外食するということの愉しみを教えてくれたという重要な意義に折に触れて言及されているのが印象的で、今、終わりのない下り坂の真っただ中にある日本経済の中で、またそのありがたさを再認識する時期なのではないか、という気がしました。