激動 日本左翼史/池上彰、佐藤優

 

 

 以前紹介した『真説 日本左翼史』の続編で、今回は1960~1972年の事象をカバーしています。

 

 前編で、戦後アメリカ軍統治下故に、アメリカ本国でのレッドパージ等の影響もあり、当初戦前と同様の弾圧を受けながらも、占領解除後、次第に活動の自由を取り戻し、知識層を中心に徐々に支持が回復して行った状況を紹介されていましたが、この本では、全学連の過激な活動や浅間山荘事件、よど号事件と言った日本にとどまらず世界の犯罪史においても注目すべき事件を引き起こしたこともあって、次第に支持を失っていく様子ところが中心となっています。

 

 一貫してマルクス主義的な考え方に肯定的な"知の怪人”佐藤優さんですが、どうしてもこの時期の左翼の暴力活動も含めた過激な行動や、スターリンの大量虐殺などの影響もあって、純粋に理論だけで受け取ってもらいないことを嘆かれていて、このシリーズでは両者を切り離して、昨今行き詰まりが顕著な資本主義経済の状況の打開への処方箋などの教訓を抽出しようということを意図されていることを、この本の冒頭でも言及されています。

 

 ただ、昨年テレビのワイドショーにおいてコメンテーターの一人が、共産党が未だ暴力革命を党是として撤回していないことを語られたのに対して、抗議をして謝罪に追い込んだ件について、やはり正式に党是としての暴力革命を撤回していないにも関わらず、そういう非難に至ったことについて、共産党がこれまでも、イケしゃあしゃあと前言を翻してきた歴史を指摘されていて、こういうことを繰り返しているから国民の信頼を勝ち得ないんだということを厳しく非難されています。

 

 ワタクシが大学生になった頃は、すでにほとんど命脈が尽きかかっていたころなので、過激な学生運動について実感はありませんが、それでもやはり共産党と暴力的な活動との関連が払拭できないことは、多くの日本人にとっての実感だと思いますし、正直、一旦ゼロリセットした方が、その理念が浸透しやすいのではないかとすら思わされます。