読むJ-POP/田家秀樹

 

 

 以前このブログで取り上げた甲斐バンドのクロニクル『ポップコーンをほおばって』を執筆された田家さんがこんな本を書かれているのを知って手に取ってみました。

 

 冒頭で、日本におけるポピュラー音楽の通史的なモノが無いことを指摘されていて、そういうところを意図されているとのことですが、サブタイトルに「私的全史」とあるように、田家さん自身が取材されて来られたアーティスティックな色彩の強いアーティスト中心の構成で多少偏りはありますが、日本のポピュラー音楽の変遷を俯瞰的に理解できる内容ではあります。

 

 この本では、第二次世界大戦終戦後から話が始まりますが、大戦中は敵性音楽として禁じられていたジャズの音楽家たちが隠れキリシタンのごとく、戦争中も密かに活動をされていたのが、戦後表立って活動を再開されたのが日本のポピュラー音楽の黎明期とされています。

 

 そんな中でジャズピアニストであった中村八大さんや、作曲家の服部良一と言った人々がヒット曲を飛ばし始めます。

 

 その後、ロックがアメリカから入ってきたのに呼応してグループサウンズが流行したり、フォークが入って来て、吉田拓郎などメッセージ性の高いフォークソングが流行したりします。

 

 そういう新しい音楽が次第に人気を集めてコマーシャリズムに染まっていくのにつれて、そういう風潮を嫌う層が新しい音楽を取り入れて、さらにそれがポピュラリティを得てコマーシャルな方向に行くと、さらに別のジャンルが開拓されて…といったカタチでディスコサウンドやファンクなどありとあらゆるジャンルが取り入れられて、日本のポピュラー音楽が発展してきた歴史を追われます。

 

 そういう流れの中で、新たな音楽を開拓するんだという、どこか肩に力が入った姿勢で音楽に取組んで、発展を促していたのが、次第に自分たちが自然体で自分の言葉で音楽を奏でる姿勢が出てきたのが、1990年代中盤のMr.Childrenだったり、スピッツだったりということです。

 

 宇多田ヒカルなど、200万枚以上のセールスという、ある意味黄金時代でこの本は終わっていて、その後音楽メディアの形態の変遷もあり、売り上げは右肩下がりとなってしまうのですが、コロナ禍の中、音楽に救われた人も少なからずおられると思うので、何らか新たなムーブメントで音楽業界が改めて活性化されることを祈ってやみません。