戦後の日本におけるインテリジェンス活動の歴史を辿った本です。
戦前は日露戦争前後の対ロ対策において、多大な成果を上げた日本のインテリジェンス活動ですが、その後、陸軍、海軍双方のセクショナリズムで停滞し、破滅へと至るワケですが、その後軍部の解体とともに、インテリジェンス活動の体制もある意味ゼロからのやり直しとなって、しかも吉田内閣以降、対米追従の姿勢を貫いたことから、かなりインテリジェンス活動はあったものの形骸化した部分もあったようです。
特に冷戦期において、スパイを規制する法律もなく、ソ連のスパイが日本においてやり放題だったようで、「スパイ天国」と揶揄された時期もあったようで、西側陣営におけるインテリジェンス活動上の「穴」となっていたようで、アメリカの要請もあって次第に体制は整えていくモノの、あくまでも省庁単位でのインテリジェンス活動ということになり、省益に資する情報にしか関心がなかったということで、国家戦略に必要な情報収集という意味ではかなり抜け漏れが多かったようです。
また、機密保護に関する法制も未整備だったことから、アメリカなど同盟国間であっても必要な情報の提供を躊躇されるようなこともあったということで、ようやく第二次安倍内閣において、インテリジェンス機関及び機密法制の整備に至ったということです。
機密情報に関する法制ということで、安倍内閣の説明不足もありあらぬ方向の非難を浴びつつの成立だったモノの、こういった法制についての一定の必要性があったのは否めないところで、さらには対中ロ政策における必要上、ファイブアイズへの参画を求められているということもあり、より体系的なインテリジェンス活動に対する体制の整備が国策上求められるようになってきているワケですが、昨今の日本の体たらくを見ると、甚だ心許ないところです…(涙)