パンデミックの文明論/ヤマザキマリ・中野信子

 

 

 コロナ禍をうけて、イタリアを中心にヨーロッパの文化に造詣の深い『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリさんが、脳科学者の中野信子先生と、コロナ禍の対応の違いをキッカケに彼我の習慣の違いを語る比較文明論的な本です。

 

 意外というと失礼なのですが、イタリア人ってかなり感染症には敏感なようで、感染拡大当初PCR検査に殺到した結果、医療崩壊を招いたということらしく、日本がPCR検査を制限したことに一定の意義があったのかもしれない、ということを指摘されています。

 

 ただ、やはりイタリア人の密接なコミュニケーションスタイルが感染の温床になったことは否定しがたいところのようで、あまりハグなんかをする習慣のない日本では、諸外国と比べて比較的コロナ感染が抑制されていたというのは、ナットク感のあるところで、こういうのもiPS細胞の山中先生がおっしゃるXファクターの一つなんだろうなぁ、とは思います。

 

 トピックはコロナ禍に限られず、イタリア人男性の多くが諸外国から見るとマザコンとも言えるほどマンマへの依存が強いことや、強い女性が多いこともあって、しおらしく見える日本女性への人気が異様に高いといった、多少下世話なネタも興味深いところですし、イタリアではビビッドな原色が好まれるのに対し、日本ではあいまいなパステル系の色彩が多く使われることなど、言われてみればそういう差ってあるなぁ、という興味深い様々な差異を語られていて、非常に面白く読ませていただきました。