ChatGPTの衝撃/矢内東紀

 

 

 ChatGPTの出現は文字通り「衝撃」だったワケですが、今後こういった生成系AIがどういった影響を及ぼすのかということを考える上でも、生成系AIにどんなことができるのかということを知っておくのは意義があると思い、手に取ってみました。

 

 メディアで扇動的に報じられているほど、何でもできるというワケではなさそうで、特に最新情報を交えたトピックにはGPT-4の時点でもかなり弱点を抱えているようで、弱点を数え上げれば、まだまだだと思う向きが、特に過度な品質を求めがちな日本人には多いような気がしますが、現時点で「できる」ことだけを考えても、積極的に活用を考えれば、大半のオフィス業務に取り入れることができそうです。

 

 この本で取り上げられているだけでも、

  ・翻訳

  ・要約作成

  ・企画書作成

  ・会議のアジェンダ作成

  ・戦略策定

  ・タスク管理

  ・課題解決

  ・コピーライティング

  ・ウェブサイト作成

など、「オレ、要らんなん!?」ってなるなんちゃってビジネスパーソンが多々おられるのではないかと思えるほどです。

 

 モチロン、完璧に仕上げられるわけではなく、ChatGPTが作ったモノを見て調整を入れた上で、ということにはなるのでしょうけど、これだけの業務で叩き台を作ってくれるだけでも大助かりで、特にこういった企画系の人材が多くない中小企業やスタートアップ企業などでは大きなパワーとなるはずで、如何にこういったモノを使いこなすかによって、かなりこれまでと比べてビジネスのステージが変わるような気すらします。

 

 ということで、やはりAIに仕事をとってかわられる人から、AIを使う人への脱却は多くの人にとって喫緊の課題であり、そうじゃないと食いっぱぐれでしまうことになりかねないことがよくわかる内容となっています。

自衛隊の闇組織/石井暁

 

 

 この本2018年の出版なのですが、昨年書店で平積みしてあったのが気になって、手に取ってみました。

 

 作者は共同通信の記者で、自衛隊内に非公式の諜報組織があることを知って長らく取材を重ねられてきて、一時は生命の危機をほのめかすような取材の中断要請もあるなど、かなり緊迫した取材だったようですが、無事日の目を見て報道されるまでの過程を紹介した内容になっています。

 

 「脅迫」された直後には”知の怪人”佐藤優にも相談されたようで、諜報活動に長けた佐藤さんは、「電車を待っているとき、決してホームの一番前には立つな!」という背筋の凍るような「忠告」をされたようです。

 

 そういった諜報機関はかなり昔からあったようですが、その存在を知る人は自衛隊の幹部クラスでもかなり限られた人の身だったということで、当然総理大臣や防衛大臣もその存在を知らなかったということで、シビリアンコントロールの原則を覆す存在だということで、かなり大きな問題をはらむ組織であり、身の危険にさらされながらもジャーナリストの良心に従って、初心を貫かれたようです。

 

 その組織というのは陸上自衛隊に関連する組織だったということで、諜報のための要員を育成していたことで知られる陸軍中野学校の系譜をひく組織らしく、やはり陸軍の「暴走」の伝統もしっかりと受け継いでいたのは、笑えないところです。

 

 もともと石井さんは、自衛隊の幹部クラスに個人的に酒を酌み交わす仲の方が多かったということで、そういった人脈を辿って、報道に至るまでの裏付けも重ねていかれたようですが、個人的な会話の中から「別班」のことを切り出されるところの緊張感は、ウォータゲート事件を報道した際のワシントンポスト紙のウッドワード、バーンスタイン両記者のエピソードを思い起こさせるヒリヒリしたモノでした。

 

 最近はメディアの権力ベッタリの姿勢ばかりが目につきますが、こういった圧力に負けないホンモノのジャーナリズムが未だに息づいていることを知って、心底安堵させられる想いでした…

人はどう老いるのか/久坂部羊

 

 

 以前、『人はどう死ぬのか』を紹介した元医師で作家の久坂部羊さんの『人はどう死ぬのか』の続編的な著書です。

 

 久坂部さん自身、高齢者医療クリニックでの勤務経験があるということで、この本の前半で認知症患者と向き合った経験を語られているのですが、暴れだす患者や何かとキレる患者に対し、久坂部さん自身がブチギレ寸前になり看護師に止められて事なきを得た経験を語られていますが、経験豊かな医師がついついキレてしまいそうになるほど壮絶な現場のようです。

 

 後半は『人はどう死ぬのか』と被る部分が多いのですが、やはり日本の医療というのは「やりすぎ」の傾向が強く、どうしても「あきらめる」ことを勧めると、患者本人よりも家族から医療放棄的な非難を浴びる可能性が高い様で、ついついそういうことを言い出すことを躊躇してしまうことが多い様で、単なる延命治療で無用に患者を苦しめる結果になることをわかっていながら、そういう医療行為をせざるを得ない状況に多くの医師が苦しんでいる現状を紹介されています。

 

 昔の老人は達観したところがあって、静かにお迎えが来るのを待つといった姿勢があって、それを周囲も理解していた部分があったと思うのですが、先日紹介した『ゼロコロナという病』でも指摘されていたように、ただただ「死」をタブー視して避けようとする死生観の「幼稚化」のせいで、無用に苦しまなければならないようになっているようです。

 

 また、メディアなどで「老い」をネガティブに捉える傾向が強くアンチエイジングみたいなものが礼賛されることがあって、それもある意味「死生観の幼稚化」の一面と言えるのかもしれませんが、「老い」を熟成みたいに捉えて、その人生の最終期を静かに、かつ豊かに過ごすように、徐々に受け入れていくことがその後の充実につながるのではないの!?ということを、我々も早めに受け止められるようになりたいモノです…

金曜夜まで仕事のモチベが続く言葉/ぱやぱやくん

 

 

 元陸上自衛官で会社員を経て、現在はエッセイストとして執筆活動をされているという方が語る、仕事のモチベーションを維持するコツです。

 

 自衛官というと屈強な人を思い浮かべますが、この方、自称「意識低い系」で周りの屈強な人たちや任務に燃える人たちに劣等感を覚えつつ、それでもそういうネガティブな意識をやり過ごして、何とか任務をこなすコツを見出してこられて、そういうノウハウをSNSで公開されているウチに、それが評判となって執筆活動をされるようになったようです。

 

 割とミッションにマジメな方というのは、どっかでポキッとなってしまうということもあるように、実はどこか柳のようにプレッシャーをやり過ごしながら淡々とミッションをこなしていくのが最強なんじゃないかとは、ワタクシ自身は思うのですが、あまり肩ひじ張らずに仕事をこなしていく方向性を勧められているところに、今となってはそれほどゴリゴリと業務をこなそうとする機など皆無なワタクシなどは勇気づけられます。

 

 そもそも日本人の多くが満点主義でことさら失敗を恐れるからプレッシャーやストレスを過度に感じるのであり、人が死ななかったり会社がツブれるようなミスをしなければええんちゃうの!?くらいのキモチでいれば、リラックスして仕事に取り組めて、ひょっとしたらその方がパフォーマンスも上がるんじゃない!?ってくらいのつもりでいいんだよ!と言ってくれているようで、煮詰まっている人には勇気づけられるんじゃないかと思います。

 

 陸自で学んだことで、「始まれば終わったようなもの」というコトバを冒頭に紹介されているのですが、始まる前は、こんなことが起こったらどうしようとかいろいろ考えがちですが、始まってしまえば必死になって考えているヒマもなく気が付いたら終わってたという経験も多々あることでしょうし、まああんまり取り越し苦労もし過ぎない方がよさそうです…

みんなが幸せになる引き寄せの新法則/近藤純

 

 

 一世を風靡した「マーフィーの法則」以降、手を変えを変え、「潜在意識」や「引き寄せ」というのは自己啓発本の定番テーマであるワケですが、それだけそういう本が出るというのは、逆になかなか「潜在意識」に訴えかけて「引き寄せ」ることがうまくいかないことの証左でもあるということで、潜在意識ラボというコーチング的な事業を手掛けられている組織を主宰されている方が「正しい」引き寄せの方法論を紹介されています。

 

 端的に言えば、なぜ「引き寄せ」が上手くいかないかと言えば、「自分の願いだけを叶えようとしていた」のではないかと指摘されています。

 

 ということで、マズローの欲求5段階説の最上位に位置する自己欲求実現のさらに上位に「貢献欲求」というものがあるのではないか、とおっしゃられていて、他人のシアワセに貢献しようとすることが、回りまわって自身のシアワセにつながり自身の欲求を引き寄せることにつながるのではないかとおっしゃられています。

 

 なぜかというと、「引き寄せ」いうモノにはエネルギーが必要で、それが自身のエネルギーだけでは不足しがちで、周囲の人のシアワセを祈ることでシアワセになった人からのエネルギーの反射を受けることで自身が注いだエネルギーの何十倍ものエネルギーの反射を受けることで、より強いチカラでの「引き寄せ」が実現できるのではないか!?ということです。

 

 そのための第一歩として、知らない誰か…例えばコンビニで親切に対応してくれた店員さんとか…のシアワセを祈ることを習慣づけることで他人のシアワセに貢献するということを提唱されていて、そういう習慣をつけているウチに、他人のシアワセに貢献しようとガンバるようになり、ひいては自分を好きになったり、自分にシアワセが返ってくることで、元々の自分の願いの「引き寄せ」につながるということで、こういう利他的な考え方というのは、多くの人にとって受け入れやすいところでもあり、短期間でうまくいかないように見えたとしても、何か気分がいいように感じるはずで、長い目で見るとホントに「引き寄せ」られるんじゃないか、という気がします。

ウクライナ戦争の欺瞞/馬渕睦夫

 

 

 ウクライナ大使を務められた経験もあるという元外交官の方が語られるウクライナ侵攻も含めた「戦後民主主義の欺瞞」だということです。

 

 元ウクライナ大使だということもあって、ウクライナ侵攻のことが本のタイトルとなっていますが、ウクライナ侵攻自体が主要なテーマというワケではなく、ディープステート(DS)という「ウォール街やロンドン・シティに跋扈する国際金融勢力およびそのネットワーク」が国際社会を牛耳っている状況について語ることがメインテーマようです。

 

 陰謀論的な内容が多く、この本の中でも自説が「妄言」と言われることも多々あるようですが、さもありなんと思えるような、なかなかついていきにくい言説が多々あります。

 

 個人的には日本での報道のような、侵攻したロシアが完全な「悪」でウクライナは可哀そうな被害者で絶対的な「善」だという水戸黄門的な勧善懲悪的な報道にモヤモヤするモノを感じていたので、ウクライナ国内の腐敗などの指摘で、それ程単純なモノではないということはナットクなのですが、バイデン大統領のキーウ電撃訪問(この本の中では頑なにロシア語呼称の「キエフ」を使用されていますが…)が支援終了の通告だったと言及するなど、現在も戦争および支援が続く状況についてどう言及するんだろう…と思える指摘もありますし、DSが自分たちの利益を損なうということで、トランプ前大統領の再選を阻止したなど、???と思えるような指摘が多くみられます。

 

 さらには、そういうDSの暗躍に敢然と立ち向かったとされている安倍元首相の暗殺についても、山上被告の単独犯ではなく、DSが絡んだ組織テロだと指摘されていて、ケネディ大統領の暗殺に類似のケースだと指摘されていて、どうしても読み進めるほどに「妄言」という指摘がアタマをもたげます。

 

 DSが世界中で隠然たる影響力を行使しているのは認識していますが、個々の指摘においてさすがにムリがあるだろう!?と思えるモノが多く、かなりモヤモヤする内容の本でした。

 

産業医が診る働き方改革/産業医科大学編

 

 

 この本が出版されたのは2018年なので、コロナ禍を経てのリモートワーク推進などといった「働き方改革」ではなく(ワタクシ自身もソッチを期待して手に取ったのですが…)、産業医の方が日々の業務の中で、不具合を訴える方への仕事の取組み方のちょっとした改善を促すことで、症状の改善を図って継続して働けるようにする取り組みを紹介した本です。

 

 常時50人以上の人が従事する職場には産業医を置くことが義務付けられているということですが、割と片手間的にこなせる(失礼!)のかと思いきや、職場で起きうるあらゆる疾患について通暁しておかなくてはならないだけではなく、その職場の業務も把握して、職場で発生するケガや病気について、それを予防したりするために業務の改善の指導もミッションのうちだということでかなり責任も重大だということで、地味ながらもかなり大変な仕事なんだということを痛感させられる内容となっています。

 

 昨今はメンタル疾患の罹患も多いということで、その恐れがある人へのカウンセリングをこなされたりすることもあるようですし、ケガや病気を経た人の業務への復帰に向けての支援プログラムの策定だったり、職場環境の改善といったことにも参画されることもあるようです。

 

 また、粉塵など化学物質を扱う事業所や建築業など事故のリスクがある事業所などにおいては、事故を防止するような業務プロセス改善に意見具申をするといった事例も紹介されており、単なる医師の枠にはとどまらない幅広い知見が求められるようです。

 

 産業医の方に対する見た目がかなり変わること請け合いで、企業においてもこういう活動を十分に支援するようにしてもらいたいところです。