ムダにならない勉強法/樺沢紫苑

 

ムダにならない勉強法

ムダにならない勉強法

 

 

 『読んだら忘れない読書術』『覚えない記憶術』と来て、この本で3部作完結ということになるのでしょうか…総合的にインプットしらモノを自分の血肉として活用できる「知識」とするための勉強法を紹介されます。

 『覚えない記憶術』でも覚えたモノをアウトプットすることで記憶を定着させることをススメられていましたが、この本ではもう一歩進んでそれを「使える」モノとするために、自分のアタマの中で情報を整理するための手段としてアウトプットの活用を紹介されています。

 学習したことを復唱することから、1対1で人に教える、セミナーの講師をする、最終的には本を書くことまで紹介されています。

 アウトプットで本を書くというのもトッピな気がするかも知れませんが、ワタクシ自身も英語学習法に関する本を書いて自分がやってきた英語学習法を体系的に辿ることができたという経験もあり、深くナットクでした。

 いずれにせよ、読みっぱなし、インプットしっ放しじゃ、やっていないのと同じことだ!と結構キビシイことをおっしゃっていますが、それだけ「使える知識」を身につけるのはキビシイことなんでしょうね…

 

なぜ君たちは一流のサッカー人からビジネスを学ばないの?/堀江貴文

 

なぜ君たちは一流のサッカー人からビジネスを学ばないの?

なぜ君たちは一流のサッカー人からビジネスを学ばないの?

 

 

 ホリエモンが、新旧サッカー日本代表と対談をしてビジネスにつながるようなことを抽出するといった趣旨の本のはずで、冒頭でも堂々と宣言をされていて、副題では「25のビジネスルール」なんて書かれていますが、結構フツーの対談で、体系だってビジネスに役立つ教訓としてまとめられているワケではありません。

 堀江さん自身、かなりJリーグひいてはアジアチャンピオンズリーグにビジネス的な可能性を感じておられるらしく、そういった話について、結構振られているんですが、サッカービジネスについて学ばれた宮本さんや多少ビジネス的な側面を意識するであろうサンフレッチェの監督の森保さんとはかみ合っていますが、まだあんまりそういう意識のなさそうな宇佐美選手とか、そういうことに興味のなさそうな遠藤選手との対談では、あんまりかみ合っていません。

 でも、単純に読み物としては面白いですし、宮本さんとのJリーグのビジネス展開に関する部分は、Jリーグのアドバイザーである堀江さんの提言をについて、もうちょっとマジメに取り組んでほしいなぁ、と感じる部分が多々あります。

 日本では、スポーツにビジネスを絡めることに否定的な意見を持つ人が少なからずいらっしゃるようですが、日本に文化としてのスポーツをもっと根付かせるためには堀江さんのおっしゃるような取組って不可欠なんでしょうね。

 

世界一子どもを育てやすい国にしよう/出口治明、駒崎弘樹

 

世界一子どもを育てやすい国にしよう

世界一子どもを育てやすい国にしよう

 

 

 出口さんが、病児保育などを手掛けるNPOの代表である駒崎さんとの子育てを始めとした日本の社会の問題についての対談をまとめた本です。

 幼い子供を持つ夫妻に取って深刻な問題となっている保育所の待機児童の問題ですが、お二方は政治・行政の腹のくくり方が足りないだけで、本気になれば確実に解決できる問題のはずだと一刀両断されます。

 というのも、義務教育である小中学校では“待機生徒”なんていないでしょ、って…そう言われてみればそうですよねぇ…

 待機児童問題に限らず、惰性だったり、既得権益に捉われたりして、プレーンに見れば間違いなく解決できる問題なのに、不合理な制約で社会的に大きな損失を招いていることが、非常に多いということを指摘されているのですが、そんなことを見ているとバカバカしくなってきます。

 でも、それは我々自身にも問題があって、ちゃんと働きかけの努力を怠らないことが重要だと指摘されています。

 少なくともちゃんと投票行動を怠らないということなんですが、その前提として投票の効果に関するリテラシをつけるということで、そういうところから確実に社会は変えていけるんだということを聞くにつけ、ちゃんと自分たちの行動で解決につなげることができるんだ、という希望を抱かせてくれる本です。

 

テレビ・新聞・ネットを読む技術/池上彰・津田大介

 

 

 新旧メディアの第一人者によるメディアの読み方についての本です。

 「読み方」って言っても、どう情報を取るかというよりも、それぞれのメディアがどういう論理で情報を出しているかということを中心に語られています。

 そういうところをアタマに置いた上で、情報を見ることで、情報の偏りみたいなものを予め自分の中で補正して理解することができるようです。

 それっていうのは、同じテレビの中でも企業論理による差があるらしく、特にNHKと民放の差について紹介されているところが印象的です。

 単純にネットが進化したのでテレビや新聞が時代遅れだというワケではなくて、それぞれの特徴を理解した上で情報を咀嚼することが、より“真実”に近い理解を促すようです。

 また、旧来からのメディアもネットの取り込みについて効果的な方法論を模索しつつあるということで、そういった観点で各メディアの動向を見据えることも情報を理解する上で重要なようです。

 

戦争で読み解く日本近現代史/河合敦

 

やり直し教養講座 戦争で読み解く日本近現代史 (NHK出版新書)

やり直し教養講座 戦争で読み解く日本近現代史 (NHK出版新書)

 

 

 テレビでも時折お見掛けする河合先生の著書です。

 今回の本は幕末以降の日本史を“戦争”をキーワードに辿るという趣旨なんですが、アメリカ、中国、韓国、イギリス、ロシアという当時日本と関係が深かった国ごとにとドルことによって、変遷を浮き彫りにしようということです。

 確かにこういう風にそれぞれの国との外交史と言うカタチにしないとなかなかクローズアップされない事象もあって、一般的な歴史の知識からは埋もれてしまいがちなことを、こういうカタチで提示することで、明らかにし、それにより歴史の因果関係が明確になりやすいようです。

 特に戦争を引き起こすに至った経緯なんかも浮き上がってくるようで、時折、時の空気に迎合した為政者や外交官を厳しく非難されています。

 それにしても河合先生は、以前紹介した『外国人がみた日本史 (ベスト新書)』でもそうなんですが、特殊な内容を取り上げるワケではないんですが、切り口の巧みさで歴史に新たな発見をもたらすということで、ちょっとハマってしまいそうです。

 

 

W杯「裏表」ヒストリー/牛木素吉郎

 

 

 1970年メキシコ大会から、ずーっとサッカーW杯を取材し続けている方がブラジルW杯直前に出版された本です。

 ワールドカップの始まりから歴史、サポーターとしての楽しみ方まで、W杯に関する情報が満載です。

 最初の方で、W杯がここまでの成功を収めるようになった秘訣について、オリンピックと対比して居られるのですが、分散開催にすることによって過度の設備投資が避けられたことや、出場国の費用負担を入場料収入に賄うようにしたことなどを挙げられていて、結構戦略的にシステムが構成されてきたようです。

 また、牛木さん自身が自腹で取材していた時期もあったということもあって、チケットの入手や現地でのホテルや交通手段の確保についても、痒い所に手が届く程の情報量です。

 ベテラン記者のモノとは思えないほど、ざっくばらんにW杯を楽しむ同士としての情報を提供してくださるといった姿勢に好感が持てる本です。

 

長嶋茂雄を思うと、涙が出てくるのはなぜだろう/テリー伊藤

 

 

 テリー伊藤さんによる“ミスタープロ野球長嶋茂雄さん礼賛の本です。

 ワタクシ自身長嶋さんが引退した翌年に小学校に入ったので、長嶋さんの活躍をリアルタイムでは体験していないのですが、よく長嶋さんの活躍が日本の高度成長期をけん引したというようなことが言われますが、テリーさんの激情のほとばしりを聞いていると、それも大げさな話じゃなかったのかなぁ、という気がします。

 また“天然”だと言われる長嶋さんですが、日本国民のそういう期待をよく踏まえていたからこそ、ここぞと言うときに活躍できたということで、テリーさんの個人的な長嶋さんとの交流からのエピソードや、次女の長嶋三奈さんへのインタビューを通して、決して努力する姿を見せないながらも、期待を裏切らないために相当な努力を重ねられていたことを紹介されます。

 特に印象的だったのが、病に倒れられて以降も、イメージを崩さないために、ダンディなスーツ姿を押し通しておられるということで、そういう話を聞くと「涙が出てくるのはなぜだろう」というタイトルにミョーにナットクしてしまいます。