知性を磨く/田坂広志

 

知性を磨く― 「スーパージェネラリスト」の時代 (光文社新書)

知性を磨く― 「スーパージェネラリスト」の時代 (光文社新書)

 

 

 ビジネス本を手掛ける著者の中でも、ひときわ深遠な内容の本を手掛けられることの多い田坂さんですが、この本は実務的なモノと哲学的なモノの中間位の位置づけになるんでしょうか…

 よく「知識」と「知能」、「野心」と「志」など、似て非なるモノを対比しながら「スーパージェネラリスト」と言われる、様々な分野のエキスパート達をも束ねて同じ方向に進ませるようまとめていけるような人材について語られます。

 そんな中で再三「現場」の重要性について語られますが、いくら頑張って「知識」をかき集めたからと言って、経験がなければその「知識」を役立てることができない…経験を踏まえて「知識」を生きたものとして活用できるような「知恵」を積み重ねて行き、結果として「知性」を持つようになることが「スーパージェネラリスト」の第一歩のようです。

 その上で、自分が成し遂げたい、社会的な意義のあることの実現を「志」すことで、多くの人と同じ方向を見ることができるようです。

 ワタクシにとっては遥か彼方の境地ですが、せめてそういう人を応援できる立場になれたらなぁ…と思わせる本でした。

 

男子の作法/弘兼憲史

 

男子の作法 (SB新書)

男子の作法 (SB新書)

 

 

 『島耕作』シリーズの作者で、いくつかの自己啓発本を書かれていることでも知られる弘兼さんが、文豪がよく書くような“ダンディズム”を語られた本です。

 文豪のようなダンディズムと言いながら、そんなにカッコつけたモンじゃなくて、結構フツーに自己啓発本っぽい感じの内容になっています。

 確かに、それなりに成功されて、クルマもメルセデスに乗られていたり、高級ワインをストックされていたりするのですが、成功されている割にかなり自然体というか、フツーな部分も多い気がしますし、自分のスジを通そうとするところと、自然にリラックスして私生活を楽しもうとする姿が非常にバランスが取れていて、あまり他人の目を気にせずに、自分の流儀を続けようとするところに、逆に現代的な“ダンディズム”を感じさせる本です。

 

ビジネスパーソンのための易経入門/岡本吏郎

 

ビジネスパーソンのための易経入門 (朝日新書)

ビジネスパーソンのための易経入門 (朝日新書)

 

 

 昨日に引き続き、中小企業の資金繰りに詳しい経営コンサルタントの岡本さんが中国の古典のエッセンスを紹介されます。

 「易経」というのは古代中国で著わされた本で、易術のベースにもなっているということなんですが、単なる占いの本というワケではなくて、儒教にもその内容が取り入れられているということで、陰と陽の組合せで人生におけるあらゆる局面での状況を表すことができるということを示されているようです。

 しかも6つの陰陽の組合せの64種類は、概ね決まった流れがあるようで、そういうところから占いに発展していったのかもしれません。

 個々の“卦”と言われる、ある状態を表す内容にも解説されているのですが、さすがにあんまり内容はアタマに入って来ませんでしたが…

 易者なんてアヤシい…と思っていましたが、何とも由緒正しいモノだったんですね…

 

成功はどこからやってくるのか?/岡本吏郎

 

成功はどこからやってくるのか? ~「成功法則」の取扱説明書~

成功はどこからやってくるのか? ~「成功法則」の取扱説明書~

 

 

 中小企業の資金繰りに詳しいコンサルタントで、『会社にお金が残らない本当の理由』で知られる岡本さんが「成功法則」を語ります。

 前半で「成功本」に効力がないのは何故かということを語られるワケですが、そもそもそういうショートカットを求める時点で“成功”者の資格はないという側面もありますし、そういうショートカットで“成功”できるんだったら、誰でも“成功”できるということで、逆説的にだったら“成功”はあり得ないでしょ、ということなんですが…

 で、“成功”するためには「人と同じことをしないこと」…うーん、なるほどなぁ…

 結局、人と同じことをしないから抜きんでて“成功”できるんであって、自分なりにひたすら自分の本分をこなして、僥倖を待つ…それを岡本さんは、「あいつ」とおっしゃっていますが…ことが“成功”につながるんだということで、捉えどころは無いんですが、何かミョーにナットクさせられてしまいました。

 

粉飾バンザイ!/小堺桂悦郎

 

粉飾バンザイ!―税理士は教えてくれない!「決算」&「会計」の裏ワザ!

粉飾バンザイ!―税理士は教えてくれない!「決算」&「会計」の裏ワザ!

 

 

 今日の本は、普段の小堺さんです!(笑)

 実勢に小堺さんが“粉飾”のコンサルティングをされた事例を元に(多少、盛ってるところはあるんでしょうけど…)中小企業における“粉飾”決算の実態を紹介されます。

 粉飾決算と言うと、「さおだけ」の山田さんによる『女子大生会計士』シリーズや『餃子とフレンチ』の林さんによる『会計課長団達也』シリーズで紹介されるような巧妙な手口で行われるモンだと思っていましたが、この本で出てくる中小企業のオヤジさん達やそれに関わる税理士さん達は、かくも安易にバレバレの会計操作をされている実態に驚かされます。

 そしてそれがバレそうになったら新たな“粉飾”をして…というところで、ニッチもサッチも行かなくなって小堺さんのところに駆け込んで…というシチュエーションみたいです。

 それにしても粉飾って意外とカンタンなんだな、ということと一度ハマると抜け出すのは一筋縄ではいかないというあたり、まさにクスリみたいなモノですね…

 

 

だれが「音楽」を殺すのか?/津田大介

 

だれが「音楽」を殺すのか? (NT2X)

だれが「音楽」を殺すのか? (NT2X)

 

 

 ネット関連のトピックに強いジャーナリストとして知られる津田さんのごくごく初期の著書です。

 語り口は今と比べて生硬な感じを受けるのですが、緻密な取材ぶりとスキのない論理展開が後年の活躍にもナットクな感じです。

 この本が出版されたのが2004年で、CDが過去最高の売上を上げた1999年以降、徐々に音楽業界に影が差し始めた頃で、CCCDコピーコントロールCD)やCDの輸入規制、音楽のネット配信の創成期、ファイル交換ソフトによる違法アップロードなど、当時音楽業界で問題となっていた事象を紹介されています。

 一応、CCCDには明確に反対の立場を表明しつつも、殊更に揚げ足を取るようなスタンスではなく、現象面を積み上げて行かれます。

 それにしても、音楽業界って結局如何に既得権益を守ろうということに汲々としているようにしか見えなくて、客となるリスナーのためといったことには全くと言っていいほど顧慮が無く、そういう姿勢が、結果として2017年時点の音楽業界の衰退を招いたんじゃないかな、と思います。

 結局偶然のヒットを期待するしかなくて、環境の変化と言うモノに対して、どう対応していこうという気概の無い業界に明日は無いと、音楽愛好者として暗澹たるキモチになってしまいます。

 

消費と投資で人生を狂わすな/小堺桂悦郎

 

消費と投資で人生を狂わすな

消費と投資で人生を狂わすな

 

 

 脱税とか節税とか、ちょっとブラックな経営指南本で知られる小堺さんが、社会人になったばかりの甥っ子におカネの指南をするという構成の本です。

 今回の本はそれほどブラックな内容ではなく、かなり真っ当な内容です。

 クルマや自宅の購入、結婚や老後の費用の確保など、フツーのテーマに多少面白おかしくしているところはあるものの、他の本のブラック振りを封印してストレートに紹介されているので、多少モノ足りないところもあるのですが、安心して(?)手に取ってもいいんじゃないかと思います。(笑)