Number ベスト・セレクション 1

 

ナンバーベスト・セレクション 1 (文春文庫PLUS)

ナンバーベスト・セレクション 1 (文春文庫PLUS)

  • 発売日: 2003/04/10
  • メディア: 文庫
 

  先ごろ、記念すべき通算1000号を発刊された『Number』ですが、この本は500号が出版された時期だったか、1998年に出版された『ベスト・セレクション』ということで、創刊号に掲載された、『Number』編集の方向性を決定づけたとも言われる普及の名作『江夏の21球』を始めとした珠玉の13編を集められた本です。

 

 元々、先日紹介した『28年目のハーフタイム』のプロトタイプとなった『叫び』の内容を確認しておこうということで久々に手に取ったのですが、それぞれがオモシロくて、思わず全部読んでしまったし、通算1000号が出たばかりだし、何よりもネタが払底しているということで、改めて紹介することにしました。

 

 『Number』は1980年に第一号が出版されたのですが、元々アメリカの『Sports Irrustrated』誌のような総合スポーツ誌を出版したいということで始められた企画だということなのですが、その企画段階で初代編集長をされていた方が沢木耕太郎さんから、既存のスポーツ記者に依存するのではなく、若手のライターに、当時未開拓であったスポーツノンフィクションの世界を切り開くようにさせては、という提案を受けて、『江夏の21球』を書かれた今は亡き山際淳司さんを始めとする若手ライターを起用したということです。

 

 また、その頃「愛する神は細部に宿りたまう」という、ドイツの美術史家アビ・ワールブルグと言う方の言葉に出合い、スポーツノンフィクションはこうあるべきだということで、編集方針を定められ、まさにその実践と言える『江夏の21球』が生み出されたということのようです。

 

 その後、421号掲載の金子達仁さんによる『叫び』まで、このスタイルの提唱者である沢木耕太郎さん執筆の『普通の一日』などを含み、代表作を10編(プラス、ナンバースポーツのんふぃしょん新人賞受賞作3篇)を並べることで、図らずもスポーツノンフィクションという新しい地平を切り開かれてきた過程を垣間見ることができるようです。

 

 通算1000号に至るまで基本的なスタンスを踏襲して、スポーツノンフィクションの進化に寄与されてきた『Number』でしたが、それは図らずも野球やプロレスといったオヤジ文化だったスポーツ観戦を、若い女性など幅広い層にまで広げたというインパクトもありそうで、日本においてスポーツが文化として定着する大きなチカラになってきたんではないかと、改めて感じさせられました。