マラソン能力別上達法/伊東嗣朗

 

マラソン能力別上達法―サブ3・5 サブ4 サブ4・5

マラソン能力別上達法―サブ3・5 サブ4 サブ4・5

 

 

 市民ランナーのフルマラソンにおける目標達成をサポートされている方の著書で、サブ4.5、サブ4、サブ3.5とそれぞれのレベルにおいて必要となるトレーニングを紹介されています。

 この本が特徴的なのは、それぞれの目標を目指すのはいいんだけれど、現状はどうなんだ!?ということをちゃんと意識したモノになっていて、ワタクシの目下の目標であるサブ3.5についても、あと少しで達成という3時間40分以内のタイムを持っている人と、ワタクシのようにようやくサブ4を達成したばかりで、あわよくば3.5を…と思っているレベルとを明確に分けて考えていて、それぞれによりふさわしいトレーニングプランを紹介されています。

 そういう意味じゃ無理にタイムを上げたいという人には、あまり向いていない本です。(って言うか、冷静に考えるとムリだよ、って暗に言ってるってことかな?)

 もう1つ特徴的なのは「主観的運動強度」という概念を紹介されていることで、他の本を読んでて疑問に思うことがあったのが、じゃあ自分のレベルのジョグってキロ当たり何分で走るのがいいんだ?ということなのですが、それぞれのレベルやその時の状況にもよるので、一概にピッタリのタイムを紹介するってのはムリでしょ、っていうのは理解できるのですが、じゃあ、ぶっちゃけどれくらいで走ったらいいのか知りたいっているのも正直なとこで、それを解決するのが、この「主観的運動強度」なのです。

 「遅すぎてツラい…」という強度9から「心臓が飛び出そう」という強度19までの11段階で、それぞれの強度で走った時の「感覚」を解りやすく表現されていて、逆に使いやすいかも…と思いました。

 ようやく腰の故障から立ち直りつつあって、今後距離を踏もうとするよりも、トレーニングの質を上げなければ…というのがあったので、いい本を見つけました!

 

大放言/百田尚樹

 

大放言 (新潮新書)

大放言 (新潮新書)

 

 

 数々の「炎上」で知られる作家の百田さんが開き直った?本です。

 確かに、元々関西のお笑いの世界で脚本を手掛けられていただけあって、ミョーなサービス精神からブラックな発言をされている側面もあるんですが、でもよくよく読んでみると、ごくごく一部のフレーズのみをあげつらって、バッシングをしているという側面もあるようです。

 「放言」とは言っているものの、かなり「まっとうな」ことを語られている方が多くて、どっかで大手マスコミを「敵」に回してしまったことで、悪意で捉えられているという部分もあるようです。

 それにしても、ホンのジョークをあげつらって袋叩きにする昨今の風潮って、コワいですねぇ…

 

憲法という希望/木村草太

 

憲法という希望 (講談社現代新書)

憲法という希望 (講談社現代新書)

 

 

 前に手に取った、新進気鋭の憲法学者である木村さんの本が興味深かったので、最新刊を手に取ってみました。

 この本は憲法の主だった条文について解説を加えると共に、現在議論になっている憲法上の問題についての解釈を紹介します。

 まずオモシロいと思ったのが、憲法と言うのはその国のそれまでの歴史に対する「反省」を集めたものだ、ということです。

 顕著なのが日本国憲法第9条で、大日本帝国憲法下で軍国主義に突っ走ってしまった「反省」からできた条文だと言えるでしょう。

 ただ現在の日本においては、あまりにも一般国民に対する憲法への啓蒙が行われていなくて、国民のほとんどが、中学・高校での公民の授業でホンのサワりだけを教わって
いるにすぎないということで、日々の生活の中で憲法を意識することがあまりに無さ過ぎる状況で、国家が好きなようにできるように、敢えてそうしてるんじゃないだろうか、と勘ぐってしまいたくなります。

 例えば、沖縄の普天間から辺野古へのアメリカ軍基地の移設なんですが、基地では現地自治体の施政権が著しく制限されることから、木村さんの解釈では、憲法上、住民投票での同意を経た上での立法措置が必要だということなんですが、自民党政権では行政権の行使で押し通そうとしています。

 特に安倍政権では、安保法制の話もありましたが、行政権を拡大解釈する傾向が強く、そういった意味で、我々の権利を守るためにも憲法をよく知った上で、政府の動きを見張っておく必要がある、と強く思いました。

 

出世しない技術/梅森浩一

 

出世しない技術

出世しない技術

 

 

 チェース・マンハッタン銀行の日本法人で人事部長を務められた方による「非・出世」論です。

 そんなエリートに「非・出世」を語られてもイヤミなだけだと思われるかもしれません。

 でも、シャカリキに出世を目指して挫折してきた人達を多く見てきている方だからこそ語れるのかも知れません。

 まずは、「出世をする・しない」の損得勘定をして、それでも出世に突っ走っていくだけの見通しが立っているならばいいのですが、仮に挫折はしなくても意外と悲惨な末
路があることも否定できないようで、そこは色んな可能性を冷静に判断する必要がありそうです。

 そんな中で「出世をしない」ことを選択したといっても、ただグータラしていたら、今のご時世、会社をたたき出されるだけなので、必要な人材でありながら、昇進をさせるには…というビミョーなラインを目指す必要があって、意外とカンタンではなさそうです。

 でも、ワークライフバランスじゃないですが、仕事をある程度の線で割り切ってしまうことが、人生全体で見るとシアワセなのかも知れないなぁ…と全く出世できないワタクシが言うと、単なる負け惜しみ?(笑)

 

イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」/デービッド・アトキンソン

 

 

 『デービッド・アトキンソン 新・観光立国論』にイタく感動した、日本在住の元アナリストであるアトキンソンさんに、他にも著書があることを知って手に取ってみました。

 『新・観光立国論』より後に出版されたようなのですが、元々日本の銀行なんかを相手にアナリストとして活躍されており、その時の経験を中心として、「外から」見た日本人の「強み」「弱み」を語るというモノです。

 よく言われるように日本人の勤勉さというのは「強み」として触れられていて、日本の発展の原動力であったことは間違いないようですが、ただ、それ十全に活かされてい
るかと言うと、そこはギモンなようで、最近はよく言われるようになった日本人の生産性の低さと言うモノを指摘されています。

 ザックリ言うと、個々の日本人は他の国比べて優秀なのに対し、マネジメントと言うか、個々の能力を引き出すと言う意味での「能力」は、他の先進国よりもかなり劣っていると言えそうです。

 ただ、そこを単に「弱み」としてとらえるだけではなくて、日本全体として大きな「伸びしろ」でもあると指摘されていて、今後の進化に期待したいところです。

 

サッカー通訳戦記/加部究

 

サッカー通訳戦記

サッカー通訳戦記

 

 

 日本サッカー界において活躍された通訳者の方へのインタビューで構成された本です。

 つい最近まで、サッカーにおいて「まともな」通訳者を確保することすら難しかったようで、世界的な名選手であった元ブラジル代表のファルカン氏についた通訳は、ほと
んどまともに訳すことすらできていなかったようで、実はそのことがファルカン氏が日本代表で成功を収めることができなかった大きな原因じゃないかと、指摘されています。

 日本代表監督の通訳からJリーグのクラブでの選手向けの通訳まで、10人の通訳の方へのインタビューで構成されています。

 どの方にも共通しているのが、必ずしも言っていることを逐語的に正しく翻訳すること自体が重要なのではなくて、話し手の個性を理解し、その場面場面でホントに言いたかったことは何なのかということを順次に判断して、一番伝わるような表現を選び取って伝えなければならない、と言うことで、何と難しい作業なんだろう、と思います。

 だからこそ、こういう世界での通訳を目指す方は、勉強ばっかりしているのではなくて、対応力をいかに伸ばして行くかということと、通訳をする相手をいかに理解するか、というコミュニケーション力を磨いた方が役に立つんじゃないか、とすら思えます。

 

NOヘイト!カウンターでいこう!/のりこえねっと編

 

NOヘイト! カウンターでいこう! (のりこえブックス)

NOヘイト! カウンターでいこう! (のりこえブックス)

 

 

 先日『さらば、ヘイト本! 嫌韓反中本ブームの裏側』を紹介したのですが、その流れの1冊ということで手に取ってみました。

 「のりこえねっと」というのは、在特会を始めとするヘイトスピーチを展開する勢力に対して、ヘイトスピーチを止めさせようとする組織で、上野千鶴子教授や元日弁連会長で都知事候補となったこともある宇都宮氏、『美味しんぼ』の原作者である雁屋哲氏等々錚々たる面々が名を連ねられています。

 ヘイトスピーチを始めとするあらゆる差別を撤廃して行こうというのが行動の趣旨のようですが、その前提として、在日コリアン被差別部落の方々が受けている差別の状況の紹介に始まって、そういった人々を差別する側の心理的な分析、そしてレイシズム対策の先達であるヨーロッパ諸国の対応の状況などを紹介します。

 でも、レイシズムと言うのは結局ナチスドイツのような悲劇を引き起こすという先例があるにも関わらず、それでも人類はそれに学ぶことができないでいます。

 それだけ人間の根源的なところに根差していると言えると思うのですが、この本の中で、そういうレイシズムをしている状況の映像を冷静な時に自分で見返して、それでも「すばらしい」と思えるのかどうか、という観点で振り返って見ることはひとつの見識なんだと思います。