「遊ぶ」が勝ち/為末大

 

 

 「侍ハードラー」為末さんがホイジンガの『ホモ・ルーデンス』に沿って、これまでのご自身の取組を語られます。

 『ホモ・ルーデンス』では「遊び」について語られるのですが、始めは純粋に楽しみとしてやっていたことでも、それをやり続けていると、何らかの義務感が伴うようになり「遊び」ではなくなってしまうということです。

 為末さん自身も最初は単純に楽しくて走っていたのが、結果を残すようになったことで、自身も周囲も何らかの期待を抱くようになり、それに応えようとする、もしくは応えないといけないと思うようになり、遊びとしての要素を失っていってしまったということです。

 それでも純粋に楽しみとして走っていた頃よりも、義務感を負ってから方が段々と結果が出なくなるということを経験されて、その過程で『ホモ・ルーデンス』を読んだところ、遊びが遊びで無くなることで喜びが少なくなり、ひいては成果も小さくなって行くことが書かれていたということです。

 そんな中で如何に純粋に協議に取り組むかということに腐心されたことで、幾分「楽しみ」を取り戻せたことで実り多い現役生活を送れたようで、そういうバランスを取ることの意義を指摘されています。

 やっぱり楽しんでやることがパフォーマンスの向上につながるのは、どんなことでも顕著なようで、自分が取り組むことに何らかの楽しみを見つけることで、より高みに達することができるようです。

 

NASAより宇宙に近い町工場/植松努

 

NASAより宇宙に近い町工場

NASAより宇宙に近い町工場

 

 

 北海道の旭川富良野に近い赤平というところで、宇宙開発を手掛ける植松工業という会社を経営されている方の著書です。

 この本の中で植松さんは再三「どうせ無理…」をこの世から無くしたい、とおっしゃいます。

 「どうせ無理…」と言うのは、そう言ってしまえば、その後は努力をしなくてもいい「言い訳」になってしまい、工夫をすることを怠ってしまうということで、それを言わないことでそういう工夫をし続ける、ということです。

 北海道の決して有利とはいえない場所で、中小企業が宇宙開発に取組もうとするなんて、それこそ「どうせ無理…」なことなんでしょうけど、それを言わなかったからこそ、実際に宇宙開発に取組み、今やNASAからも協力依頼が来るくらいの技術力を身に付けることができたということなのでしょう…

 今の日本は、型にハマったありがちな人材ばかりを育てることに終始し、すぐに「どうせ無理…」と言ってしまいがちな社会ですが、こういう型破りな人が多く出てくることが、今後の発展のカタチがあるのかもしれません。

 

真田丸の謎/千田嘉博

 

 

 城郭考古学の専門家が「真田丸」を語ります。

 と言っても、昨年の大河ドラマ真田丸」放映直前の特需を狙った編集部の無茶振り企画に戸惑う著者の様子が伺えます…と言うのも、真田丸大坂冬の陣直後に、徳川方に原形を伺えないまで徹底的に滅却されて、資料もほとんど残ってなく、根拠の薄いことを語りたがらない専門家としてはなかなか扱いにくい素材のはずなんですが…

 ただ、直前に九度山に幽閉されていた時に昌幸・信繁親子監視の任務を負っていた紀州浅野家から大坂冬の陣を描いた資料が発掘されて、砦程度だと思われていた真田丸が、城郭レベルの規模があったと思われることを踏まえて、日本史上最後の戦闘目的の城郭という、ビミョーにムチャな位置づけをしたところは、笑ってやり過ごすとしましょう!(笑)

 それよりも、戦国時代初期から織豊時代を経て江戸時代に至るまでの城郭の変遷が興味深く、次第に戦闘目的から統治目的の機能を拡充していく様子が語られていて、あまり統治に携わることのなかった真田信繁が、武田家の流れを汲む戦闘的な城郭を、戦国時代の終わりとされる大坂の陣において真田丸として現出させたことは、何か象徴的な意味を持つように思わされました。

 

ザ・殺し文句/川上徹也

 

ザ・殺し文句 (新潮新書)

ザ・殺し文句 (新潮新書)

 

 

 昨日紹介した『一言力 (幻冬舎新書)』と一月遅れで出版された本で、『一言力』と対をなすというか、“実践編”とも言える内容の本です。

 ただ、完全に“一言”ではないのですが、ワンフレーズで聞き手のココロを揺さぶって、説得する文句を紹介されています。

 その中には、スティーブ・ジョブスが、当時ペプシマーケティングを担っていたスカリーをスカウトした際に発した、

 「このまま一生砂糖水を売り続けるつもりか?それとも世界を変えてみようと思わな

  いか?」

というフレーズを始めとして、各界の著名人が発した殺し文句”を紹介した上で、そのエッセンスを踏まえた活用法を紹介されています。

 ただ、『一言力』同様、如何にコトバをそぎ落として、本質的な部分のみを聞き手にぶつけるということは共通していて、そのことでコトバのパワーを強めようとしています。

 両方セットで“殺し”のテクニックを磨いてみませんか?

 

一言力/川上徹也

 

一言力 (幻冬舎新書)

一言力 (幻冬舎新書)

 

 

 「ストーリーブランディング」の川上さんが「一言」のパワーを語ります。

 インターネットを始めとして、情報過多の現代だからこそ、本質をズバリ衝いた「一言」を発することができれば、大きなチカラを発揮できるのではないか、と指摘されます。

 その「一言」を生み出すための手法として、

  要約力、断言力、発問力、短答力
  命名力、比喩力、旗印力

の7つに分類して、詳しい方法論を解説されています。

 こういうのってセンスしだいなんだろうなぁ…と諦めがちですが、トレーニング次第では何とかなるということもあるのですが、結局色んなことを付け加えてしまうことで、却って本質から遠くなってしまうことは確かなようですし、如何に情報を少なくして、過不足なく本質を伝えようとするか、ということがより重要になってくるということのようで、ある程度「覚悟」をもってコトバを「捨てる」ことが重要になってきているようです。

 

僕らが毎日やっている最強の読み方/池上彰、佐藤優

 

 

 現代の日本を代表する知性であるお二方がご自身のインプットについて語ります。

 インターネットが隅々まで普及し、以前と比べると随分情報収集のやり方も変わったように思えますが、お二方によると、やはり情報収集の基本は新聞と書籍になるんだそうです。

 そんな中でも書籍は世の中で起こっていることを「理解する」ため、新聞は世の中で起こっていることを「知る」ためにあるということです。

 だから、書籍で情報収集をするための基盤を作った上で、新聞を中心として情報収集をするということのようですが、いまさら新聞なんて…と思われる方もおられると思うのですが、やはりそれなりの人とカネをかけて作られた新聞には、それなりの取捨選択がなされているようで、玉石混交のネットとは比べ物にならない「品質」が保証されているようです。

 ただ、近年新聞社ごとの「差異」が広がっているとのことで、一紙だけを読んでそれをうのみにしてしまうことのリスクも高まっており、二紙以上の購読を勧められています。

 また、書籍では古典と格闘することの重要性に触れられていて、そういう「苦闘」が知性を作り上げるんだということです。

 新聞を読まず、古典も避けているワタクシには少々耳の痛い本ですが、どうもそういう積み上げが不可欠のようです…

 

雑談力/百田尚樹

 

雑談力 (PHP新書)

雑談力 (PHP新書)

 

 

 『永遠の0』に引き続き、『海賊と呼ばれた男』も映画化された、現代を代表する作家でありながら、歯に衣着せぬ発言を連発し、波紋を投げかけることでも知られる百田さんが語る「雑談」論です。

 なぜこんな本を百田さんが書くことになったかと言うと、百田さんの雑談がメチャメチャ面白いらしくて、編集者に是非に、ということで書かれたそうです。

 この本で百田さんは、雑談の面白さは内容よりも、話の展開のさせ方だとおっしゃいますが、本の中身としては、結構こういうネタということで内容論を話されてて、どっちやねん!?と思いますが、多分展開のパターンを紹介しようということなんでしょうね…

 ちなみに本自体は百田さんにしては説明調が多くて、期待したほどにはオモシロくないのですが、営業なんかで雑談をする時に、パターンを身に付けたら、ツカミがかなりウマくなるんじゃないかな、と思います。