逆風に立つ/伊集院静

 作家の伊集院静さんが松井秀喜さんとの交わりを綴った本です。

 まだ、松井選手が日本にいた頃に、松井選手が伊集院さんのファンだからということで実現した
対談をきっかけに深い親交につながったということです。

 元々、伊集院さんは以前の野球選手の対談の経験から、野球選手にあまりいい印象を持っていな
かった、とこの本で語っておられますが、次第に松井選手の人間性に傾倒していく様子を語ってい
ます。

 そして、メジャーに渡る際の覚悟を見て、当初、外野でいらないことをいうと迷惑がかかると
いうことで、沈黙を保っていた伊集院さんが、妙に松井選手を「裏切り者」扱いする風潮に耐え兼
ねて、『戦後、日本がアメリカに送り出すもっとも美しい日本人』という美しい文でエールを送る
ところが印象的です。

 それにしても、松井選手に傾倒している伊集院さんの文章だからということもあるのでしょうが、
松井選手の出処進退の美しさに感嘆の念を覚えます。

 その「美しさ」が伊集院さんの、最も伝えたかったことなのでしょうか…