売る力/鈴木敏文

 セブン&アイ・ホールディングスの鈴木会長の著書です。

 冒頭で、「売る力」とはということで、お客さんに「買ってよかっ
た」と思ってもらえる力だとおっしゃっておられますが、そのために
必要なのが、「お客さんの立場」で考えることだとおっしゃいます。

 「顧客第一主義」ということを掲げる企業は多いと思いますが、
「お客さんのために」ということでいくら頑張っても、視点の出発点
が売り手側だと、どうしても売り手の都合が入ってしまい、お客さん
にとっての購買動機とはならないようです。

 鈴木さんは、自社において欠品というものをヒドく嫌われるようで
すが、店の立場からすると廃棄ロスの回避といった目の前の数字を
追いかけてしまいがちですが、それがゆえに欠品が生じると、それ
を求めて来店したお客さんの信頼を失ってしまい、長い目で見ると
大きな利益の可能性を失ってしまうとおっしゃられています。

 また、鈴木さんはお客さんの嗜好の変化といったものに未だに、
最前線にいるかのようにアンテナを伸ばし続けており、成功者にイン
タビューをするとか、世間の動向の変化に敏感になりながら、ニーズ
のタネを探し続けておられます。

 「損をして得をとる」じゃないですが、そういう態度こそがトップ
を走り続ける秘訣なんでしょうね。