そして、メディアは日本を戦争に導いた/半藤一利、保坂正康

 

 

 先日、半藤さんと佐藤さんの対談による昭和史本『21世紀の戦争論 昭和史から考える *1』を読んで感激した勢いで、昭和史の大家である半藤さんと保坂さんによる戦前の昭和史に関する対談本を手に取ってみました。

 ちょっと肩透かしだったのが「メディアの戦争責任」ということがテーマになるわけですが、戦争について書くと売れるけど、戦争に反対すると売れない…そうなると、ツブれることを覚悟で反戦を続けられるところまで続けるか、体制にすり寄って戦争礼賛をするか、いずれ二者択一を迫られるということですが、多くのメディアが後者を選ぶことになったということで、それ以外にあんまり論点の深まりがなくて…ということでした…

 あとは、最近のメディアは不勉強だとか、ジャーナリストの大先輩である、じーさま方の諫言というか、単なるグチだというか、そういうことで、あんまり読み物としての価値は感じません。

 それよりも印象的だったのが、先ごろの参議院選挙において、改憲勢力が、改憲の発議を行うことができる3分の2の議席を占める結果となったわけですが、この本の冒頭で半藤さんが自民党改憲草案を見て激怒したことを告白されています。

 その内容は、「公益及び公の秩序」を理由に人権の制限をできるような規程を盛り込もうとしているところであり、このまま自民党のやりたいようにやらせてしまうと、戦前以上の全体主義的な国家ができあがるリスクがあるということを意識しておかないと、大変なことになってしまうと、注意を喚起しておられます。

 それにしても本当の狙いを隠したまま、別の論点で選挙をしようとするなんて、民主主義を何だと思っているんでしょうか?

 

 

*1:文春新書