お金のために働く必要がなくなったら何をしますか?/エノ・シュミット、山森亮、堅田香緒里、山口純

 

お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか? (光文社新書)

お金のために働く必要がなくなったら、何をしますか? (光文社新書)

 

 

 本格的なAI時代が視野に入ってきて、多くの人が仕事を失うかもしれないという可能性が出てきたことと併せて日本でも取り沙汰さえるようになった「ベーシックインカム」をメインテーマにした本です。

 少し前にヨメにベーシックインカムの話をした時に、かつて旧来の日本を代表する大企業に勤務していた彼女は、その概念を感覚的に理解できなかったようで、多くの日本人にとっては「働かざる者食うべからず」という概念がホネの髄まで浸み込んでいて、働かずしてカネを得るということに罪悪感や嫌悪感を感じるところがあるようで、生活保護を受けている人を白眼視する向きすらあるようです。

 ただ、日本国憲法生存権の保障という意味では、そういった制度を視野に入れておく必要がありそうだということで、ヨーロッパ諸国では既に実証実験に取り組んでいる国も少なからずあるということです。

 そういう制度面もさることながら、ベーシックインカムが導入されて、どう人生が変わるかということなのですが、まず多くの人が憂慮している「誰も働かなるんじゃないか!?」という危惧については、実証実験の結果でそういった状況はほとんど生まれていないということで、“労働”というのは、人間の本質的な欲求に基づいているらしいというところが意外でした。

 ということで“食うために働く”状況と比較して、ギスギスした感じが軽減される傾向があるということで、より本質的な幸福につながる可能性が高いようです。

 それにしても、結構現実的に来る可能性の高い世の中のハナシなんですが、ちょっとしたユートピア的なハナシをされているようなフワフワした感じを受けるワタクシも、旧来的な思考から抜けきれないようです…