以前、『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』でその斬新な観点に唸らされた三戸さんの近刊なのですが、これまた論議を呼びそうなタイトルで楽しみにしていました。
現在はベンチャーキャピタリストとして活躍されている三戸さんですが、社会人になられた当初は営業マンとして活躍されていたということで、その経験を踏まえて、昨今のビジネスを取り巻く状況を鑑みると、”営業”が介在する必然性のあるシーンがどんどん減ってきていることを指摘されています。
そういった状況になっているいくつかの要素のうち、すぐにピンとくるのがテクノロジーの進化だと思うのですが、ネットでの販売の普及によって営業マンが介在する場面は減りましたし、営業マンが果たしてきた様々な役割を代替するMA(マーケティングオートメーション)やSFA(セールスフォースオートメーション)などのセールステックと呼ばれる自動化で、営業マンの介在が不要になるだけではなくその精度も向上するといった効果が出ているということです。
それよりももっと衝撃的だったのが、圧倒的に魅力的な商品を開発することや、斬新なビジネスモデルを開発することにより、営業そのものが不要になるという事例を紹介されており、前者の例としてiPhoneを、後者の例としてGMを抜いて全米ナンバーワンの自動車メーカーとなったテスラの事例を取り上げられています。
まあ、そういった取組がどこででもマネができるワケではないのは確かですが、営業ありきのビジネスモデルを継続することは、アップルやテスラのように商品力や戦略の巧みさで戦おうとする企業と比較すると圧倒的に生産性で劣ることになってしまうので、早晩市場から退出せざるを得なくなってしまうことが容易に想像できます。
特に、日本のサラリーマンの大多数を占める営業マン経験者の方からすると、心情的に認めたくないことを、論理的に突きつけられることはツライんじゃないかとは思うのですが、日本企業はそういった”営業”ありきのビジネスモデルを脱することができなければ、国としても生き残りが難しくなってしまうのかも知れません。